JIN-仁- 第10話

突然の頭痛に襲われた、瞬間。俺は思った。


もし、あれが俺だったとしたら

俺は俺の手術をした事になる。

しかし、あの声は龍馬さんだった。
だとしたら、あれは龍馬さんなのか。

あれが龍馬さんだったとしたら
龍馬暗殺はなくなる・・・・・訳がない。



その後、野風さんから文が届いた。



野風さんにさる藩のご隠居から身請け話があり
2500両で妾にと望まれたらしい。

身請けの前には身体のお調べを行う必要があり
そのお調べを俺にお願いしたいと言う。




吉原の店の主・鈴屋彦三郎は語る。

あの夜、野風は思い出を作りたかったんだと思います。
妾になれば、塀に囲まれ二度と出られる事は出来ません。

つまり二度と野風には会えないのです。




俺は思う。
この頭痛はタイムスリップの予兆ではないのか。

しかし、今、ここで戻ったら彼女は一体どうなってしまうだろう。

ただ、予感がする。


何もかもがもうすぐ終わる。


小さな蝶が引き起こした嵐は起こした蝶をも巻き込んで
時の波間に消えていくのではないだろうか。







そうして、俺は野風さんの身体のお調べを行う事となった。


心音。そして触診。

彼女の左胸を触った時、しこりを感じた。
何度も触ってみた。


その後、主の彦三郎さんに答えた。


野風さんは問題ありません。


それは誠でありんすか?


はい。



俺はそう答えた。



たしかにしこりがあった。
それは小さく悪性の腫瘍とは判断は出来ない。

だから問題ないと答えたのも嘘ではない。



医者としては、もう少し入念な調査をするべきかもしれない。


だが、写真に映る彼女の存在が濃くなっているのを見て
調査するのを躊躇する自分がいる。


彼女はおそらく身請けされた方と野風さんとの間に生まれた
子の子孫なのだろう。

だとしたら、彼女の事を思えば・・・・・


彼女の事しか考えてなかった俺は
咲さんの話もどこか上の空で聞いていた。


そのせいか、咲さんはどこか怒っていたようだった。


どうして怒っていたのか
俺には分からなかったが、龍馬さんはその答えを教えてくれた。



咲殿はどうしてここまで先生に親切にしたのか、わかっとるんか?
好いとるからじゃ。

みんな、わしと同じ答えじゃと思うぜよ。




振り返ってみれば思い当たる事は山のようにあり。

気付かなかったとはいえ
自分はどれだけ咲さんに酷な事をしてきたのかと。



そして、俺はその夜
仁友堂を橘家からペニシリン製造所に移転させる事を決めた。

この家には――――咲さんにはもう関わらない方がいい。

そう思った。


その時、咲さんが俺の下を訪れた。


野風さんをもう一度診て下さい。
野風さんは胸にしこりがあると仰ってました。



俺は何も答えなかった。


やはりお気づきだったのですね。

彼女の母親は乳に岩が出来る病で亡くなりました。
子が親に似るのは道理であります。



触診だけで乳がんかどうか診断するのは難しいのです。


南方先生は彼女のために
あなたは野風さんを見殺しにしようとしてるのではないですか?

でも、野風さんは先生の命を救ってくれた方じゃないんですか。
野風さんを助けて差し上げたいとは思わないのですか?



鬼、ですよね。私は。



いいえ。でも咲はもう耐えられません。

医術は時として身体だけでなく心までも裸にします。
咲はもうむき出しの心を見てはおられませぬ。



そう言って咲さんは部屋を出て行った。


しょうがないじゃないか。

俺にはそうしか言えなかった。





そして橘家との別れの時が来た。


咲さんが風呂敷包みを渡してくれた。


これは?

御弁当です。これくらいしか私には出来ませぬ故。

今までありがとうございました。
先生と出会い、その医術を学べた事は私の人生の宝でございます。
私にとっての医術は生まれて初めて打ち込めたものでした。
中途半端な結果になりましたがこれからは嫁ぎ先の夫や
両親、ゆくゆくは子供に医術を教えようと思います。



嫁ぎ先?


私に縁談が来ておられるのです。


・・・・・そうですか。
私は咲さんの顔を見るといつもホッとしていましたから
きっとそういう家になるんじゃないでしょうか。

咲さん、お幸せに。



はい。



そうして俺はペニシリン製造所へ向かった。

咲さんの涙を見ないように




そしてペニシリン製造所に着いた俺は
咲さんがくれた風呂敷包みをほどいてみた。

中身は揚げ出汁豆腐だった。

山田さんは咲さんからだと聞いてあれだと思ったみたいだが

ちなみに俺にはあれが何なのか、全く分からない(; ̄∀ ̄)





この時、咲さんは俺が好きだと言った言葉を
ずっと覚えていてくれたんだなと思った。

そして、もう二度と食べられなくなるのだなと。


そんな余韻に浸っていた時、突然龍馬さんがやって来た。




そうして、俺は龍馬さんに
半ば無理矢理連れ出されて長州の久坂玄瑞という方に会う事になった。

龍馬さんは攘夷派の長州の方に梅毒に効く
ペニシリンを売りつけて手を結ぶ事を考えていたらしい。

それで俺はその長州の方で
梅毒にかかった方をペニシリンで治療するために
連れてこられたらしい。


龍馬さんはその久坂さんに熱く語りかけた。

おまんらは幕府に戦をおこそうとしとるじゃろ。
じゃが、おまんらは必ず負ける。
そんな暇があったら夷狄相手に売りつけ
世界に冠たる海軍を作り夷狄を打ち負かすぜよ。


その光景に俺は思った。

歴史に詳しくないからよく分からないが
俺は今、ものすごいものを見ているのではないだろうか。

これは維新への針を一足跳びに動かすものではないだろうか。


これまで俺は先の事は考えず
目の前の事を見ようと思っていたのだが

歴史を変えてしまう事は本当に罪深い事だ。


もし、死ぬはずだった人が死なずに生きていて
別の方と一緒になっていたとしたら

その死ぬはずの方がいなければ
あったはずの運命をも壊してしまうのではないか。


俺はこれ以上ペニシリンを使って欲しくないと
龍馬さんに訴えた。

そしてその理由を色々と話す中で

俺は龍馬さんの背後から刀を持った男性が襲い掛かるのを見た。



龍馬さん!


そういい終わらないうちに龍馬さんは
刀を抜いて背後から来た男を刺し殺していた。


俺達の前後に刺客が待ち構えていた。




先生。わしはあっちに行くき、その間に逃げ。


そう言って龍馬さんが向こうの方へ走り出すと
刺客達も皆一様に龍馬さんがいる方へ走り出した。


この刺客は龍馬さんを狙ったもの。


だとしたら俺が歴史の時計を進めたツケ
それが龍馬さんに回ったという事か。


死んではいけません!


俺は必死になって龍馬さんを救おうと奔走した。



先生、戻るぜよ!


龍馬さんは俺を庇おうとして敵の刃を防いでいたのだが多勢に無勢。

龍馬さんは刀を叩き落とされ刺客の刃を喉元に突きつけられていた。




俺は龍馬さんを庇った。





その瞬間、俺と龍馬さんはすぐ近くにあった崖を転がるように落ちていった。



気が付くと俺は川の中にいた。

しかし、龍馬さんはどこにもいなかった。


龍馬さんは一体どこに―――――。








さてさて、あの展開を考えると龍馬さんは
タイムスリップした可能性が高いのですが

だとしても第一話で見た人物が
龍馬さんであるとは限りませんからね。


その辺の謎は次回に持っていくとして

今回の主役は野風と咲さんですかね。


同じ方をお慕いする者同士。

諦めきれないから野風は
身体の調べで胸に岩=乳がんがあるかどうか
見てもらい、それが岩であれば身請け話が御破算になるし
また南方先生に会えるからと思う一心で

身体のお調べを南方先生にお願いしたし

何より彼に身体を触れて欲しかったという願いも
あったんでしょうね。


ですが、先生は「問題ない」と答えたので野風の企ては御破算になった。




そして、咲もまた同じく
南方先生と一緒にいたいから縁談の話も躊躇していた。

でも、南方先生の傍にいて
痛切に感じたのは彼女の存在。



先生にはおられるのです。
その方のためになら鬼にもなろうという方が。
あの御優しい先生をそこまでさせる方が。

私の出る幕などいつまで待ってもございませぬ。



そうして縁談を決めたのだけれども
おそらく嫁いだとしても
時の流れの中であっても
彼女の思いは消える事はないのだろうなと思わせてくれる感じがします。



それから気になる展開としては
佐分利さんは華岡流の出ではないかという描写がありました。


華岡流というのは日本で初めて麻酔手術を行った医術の流派だそうで
そこでは乳がんとかの手術も行ったそうです。

ですが、この華岡流というのは秘密主義というか
その手術の方法とかは門外不出だったそうです。

その辺が今後、野風さんに繋がっていくのかもしれませんね。



それにしても咲さんの風呂敷包みを見ると
山田さんや佐分利さんはあれを思い出すんでしょうけどね ̄▽ ̄



それから龍馬さん演じる内野さんの殺陣
相変わらず見事です。

「蝉しぐれ」の頃をふと思い出しました。



さて、次回は最終回で85分SP

どんな結末が待っているのか、とても楽しみぜよ ̄▽ ̄

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