トップセールス 第3話 「傷」

車を売るという事は
お客様と未来を一緒に作る事

この時代―――1975年頃は
自動車の排ガスが大気を汚染
それにより喘息等の人体の健康に悪影響を及ぼしていた。

それに苦しむ人々はこう思っていた。



車なんてこの世からなくなればいい。




それにより日本は排ガス規制を定めた。


しかし、自動車販売会社は利益優先で
法の隙間を狙って排ガス対策されていない車を売ろうとしていた。


ミヤケ本社もそんな方針だった。
特にミヤケは社長が交代したために


所長はお客様のためにも
排ガス対策車を売っていかなければならないと進言した。


その本社の方針に所長はたてついたために
本社から新しいマネージャーが派遣され所長は現場から外された。




そこで悲劇が起きた―――――。




1976年に一介の新聞記者の記事が
政界を大きく揺るがしたロッキード事件。

自分の記事で国を動かす。

それが出来た時代。

しかし、雑誌のスポンサーの意向によって
自分が考える正義の記事が書けない。


ここで大森は社会の壁にぶち当たったみたいで。



そして、その排ガス規制によって
アメリカと日本、国同士の思惑をぶつけていくのが通産省

ここで高村は国の壁にぶつかっていたみたいで。



そして隆男の妻・真理子は
槙野が見つめる先に隆男がいた事を知っていた。
槙野が隆男のことが好きな事を知っていた。
そして隆男が槙野のことを好きな事を知っていた。


それを知っていながら
真理子は槙野に隆男との仲を取り持って欲しいと頼んだ。

そして自分と隆男は結婚した。


しかし、結婚して7年経った今でも不安でたまらない。

槙野と隆男が一緒にいる。
それが自分を不安にさせる。

結婚したのに。7年も経っているのに。

不安でたまらない。


ここで真理子は自分がしてきた事のツケという壁にぶつかったみたいで。







そして阿部は
自分の母親が喘息だった事から
排ガス対策されていない車を売る事が嫌だった。

自分の思い

会社での販売成績不振という圧力

未だに車を一台も売れていない。

胃腸薬が手放せなくなっていく。



そこで阿部は―――禁断の手を使ってしまった。




それから阿部は着々と売り上げを伸ばしていった。

しかし、未だに胃腸薬が手放せない。



それから間もなく阿部はお客様が受け取った代金にまで手をつけてしまった。

その日、阿部は会社を飛び出したきり戻ってこなかった。




そして阿部の机にはたくさんの督促状が残された。


阿部は排ガス対策車を売る場合
大幅な値下げをして売っていた。

その値下げは会社が掲げる額以上のものだった。

その差額を阿部は自腹でつぎ込んでいた。

そうして自分の金でお客様にサービスをしていた。


それが追いつかなくなって
阿部はとうとう客の金にまで手をつけてしまった。




槙野、所長がその真実に気付いた時には


手遅れだった―――――。







それから間もなく阿部の母親が会社を訪ねた。


彼女は言った。

息子は所長さんが好きでした。
所長さんみたくなりたいと言っていたと。


その一方で最近は
自分の成績が悪くて所長さんの立場が悪くなったって話していた。



「阿部さんが売らないと所長が困る」

そう言ってしまったために阿部さんがこのような事をしてしまった。


私のせいです。


自分の忙しさにかまけて
阿部がそのような状況に置かれていた事を気付けなかった。
もし、側にいたら気付いてやれたはずなのに。


私のせいです。



二人は彼女に深々と頭を下げた。



「なして、うちの子は死んだんでしょう。
車売るのに命を捨てなければならないのでしょうか。」


二人は何も言う事が出来ない。


「人さんの事は恨みたくない。私は車を恨みます。」




その日、岡野は昔の事を語り始めた。

戦時中、ミヤケは戦闘機を作ってた。
自分は毎日ミヤケの戦闘機を整備していた。

17歳の頃だった。


『日本は神国だ。最後の一兵まで戦う。』


そう信じていた。

自分はその戦闘機に乗っていく特攻兵を見送った。

同い年のやつもいた。
片道分の燃料しか入れず旅立っていったやつを
何人も見てきた。



―――ヒドイ話だ。

それから自分はモーターショーの会場でミヤケの車を見ていた。


その時、思ったんだ。

おまえと同じだ。


ミヤケの戦闘機で人の未来を断ち切ってきた俺が
ミヤケの車でこれからは人の未来を作れるんじゃないかと。


それから俺は生き直した。


・・・・・それなのに。
俺はまた人の未来を潰してしまった。


おまえ、まだ信じられるか。

これが人の未来を作る仕事だと。



槙野は正直、迷っていた。
このまま車を売り続けていいものか。

それを察したかのように岡野は言う。


信じなくちゃな。
信じなくちゃ。


阿部に申し訳が立たん。



岡野はそう自分を奮い立たせていた。

そして槙野は―――――。




今回は所長が本当にいいですね。




序盤では車を取り戻すために奔走する岡野所長。


ゴロツキ共の相手を上手くこなしています。
麻雀での活動もこうした仕事の一環だったようで。

まさか、折りたたみ傘が特殊警棒になるとはねぇ(笑)


その光景に槙野は腰を抜かしたみたいでしたねぇ。



そこで岡野は言うんですね。



誰でも一度や二度、こんな事がある。

車を売る事を怖がるな。





たしかにああいった事は一度や二度あるかもしれません。

しかし、阿部さんのような出来事だけは
もう二度と起こしたくはないですね。


人生色々と予想もつかない出来事があります。



そんな中で自分の信念を貫く事が如何に難しい事か
改めて痛感します。



そんな中を生き抜く上で最も大事なのは



傷。



人と人が関る仕事の場合
人が最後に信用するのは心

相手の心に寄り添う心がお客様を動かす。


人の気持ちに寄り添えない人はこの仕事には向いていない。


今回はそんな傷を無視するような人が上司になったために
傷が分かる人が犠牲になってしまった。



心の痛みを知っていればこそ
相手の痛みもわかってやれる事ができる。


そこに信用が生まれていくんでしょうね。





ただ、こうした傷を負った時に
そこから立ち直るのはなかなか難しいです。


でも、時間というか
自分の回りの社会はそんな自分の傷が癒えるのをなかなかに待ってはくれませんからね。


そういう時
少しだけでもいいから


誰かと一緒にいたい。

誰かの声が聞きたい。



そんな風に思います。

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