風林火山 第43話 「信玄誕生」

長尾景虎が京にいる間に武田は大熊朝秀を調略。
そして大熊は武田に就いた。

大熊の情報によると今の葛山城の城主は落合一族。

その落合一族を既に真田幸隆は調略していると言う。


勘助はそんな真田を頼もしく思った。



それから武田は尼飾城を落とし長尾方の地侍を一掃。
再び善光寺周辺を治め、越後に脅威を与えていた。



その間、越後は動かなかった。

正確には動けなかった。

越後に降る深い雪のために。



その身動きの出来ぬ状況に一番苛立ちを覚えていたのは
意外にも宇佐美定満であった。

上杉家以来の家臣であった大熊朝秀が武田に走った事が
癇に障ったらしい。



それから雪が解けた4月に長尾景虎は出陣した。

景虎は川中島一帯を攻め落とした。


対して武田は景虎が左を攻めれば右を平定し
景虎が右を攻めれば左を平定するという平行した戦いが続いた。

そして9月には長尾は越後に兵を退いた。

これ以上は深い雪によって戻る事が出来なくなるためであった。




領地を失わずに済んだという事では武田の勝利ではあった。

味方に大きな痛手はない。

しかし、それは敵方である長尾も同じ事であった。



いずれ、決戦をしなければ
この戦に終わりは見えますまい。



勘助の言葉に晴信も頷いた。






そうして終わりの見えそうにない武田と長尾の戦いに
思いもよらぬ人物が両家に和議を打診してきた。




時の将軍・足利義輝であった。



武田家に訪れた使者は既に長尾家を訪ね、景虎は和睦に応じたと言う。



晴信も和睦に応じた。

ただし、条件をひとつ出した。

武田晴信が信濃守護となる事を認めさせる。





家臣達で軍議が行われた。

馬場信春は言う。

信濃守護となり長尾と和議を結んでしまえば
北信濃に兵を出す事はできなくなると。




勘助。

何故このわしが和睦に応じたか、わかるか。



これで長尾景虎とも大いに戦えまする。


御館様が信濃守護となられますれば
その信濃を侵す長尾家を見過ごせませぬ。

信濃衆の旧領回復を名目に
義をふりかざす長尾を討つは我らが正義。

詭弁ではござらぬか。
詭弁ではござりませぬ。

信濃守護に従わず長尾景虎に組みする者は反逆の徒。

晴れて討伐する事ができ申す。

また、それを助ける景虎を成敗する名目で
越後へ出兵する事も出来まする。



左様じゃ。




そうして武田晴信は信濃守護となった。

これで長尾は信濃に兵を出す大義名分を失った・・・はずだった。











しかし、思いも寄らぬ人物が景虎に救いの手を差し伸べた。



関東管領・上杉憲政であった。


景虎殿、このわしの後を継がぬか。

上杉の名跡と関東管領の職をそちに譲るというておるのじゃ。



この申し出に流石の宇佐美も驚く。


さすれば、関東管領は守護の上に立つ者。
信濃を私する武田を成敗する事の大義を得よう。


ただし、関東管領たる者
まずは関八州平定せねばなるまい。
それを妨げる北条をまずは成敗する事じゃ。
そちに上杉家と管領職を譲るは
上州にてわしの助けを待ちわびる家臣領民のために他ならぬ。

頼む。

わしに代わって北条を討ち果たしてくれい。



その思い、慎んでお受け致しまする。
されど、其の前に将軍家より関東管領の命を正式に
承りならねばなりますまい。



なんと。


この景虎、再び上洛を果たしまする。
先の武田との和睦、将軍家が我に上洛を促すためにござい申した。



将軍が?


将軍家は畿内に勢力を強めている三好長慶・松永久秀によって
近江国に落ち延びていた。

それを助けるために将軍が景虎に上洛を促したのであった。

そこまでに景虎は将軍家の信頼を得ていた。



上洛後には必ず関東平定致しまする。


こうして、長尾景虎は将軍を助けるため
そして上杉の名跡と関東管領の職を譲り受ける許可を得るために
京へ向かう事と相成った。















其の頃、勘助は御館様の下を訪ねた。




わしを由布を存分に慈しんでやる事ができなんだ。

勘助、わしは愚かじゃな。

誰も彼も慈しみたいと思う一方で
誰も彼も慈しめぬ己がおる。


わしは由布を諏訪に追いやったにすぎぬ。




左様な事はござりますまい。
由布姫様も四郎様も諏訪におらればならぬお方にござりました。
諏訪の民はお二人がおることで
どれほど武田のために働いたことでござりましょうや。



勘助、このわしが信濃守護になる事を望んだは
由布のためでもある。


勘助の隻眼から涙がこぼれる。


これで由布が愛した信濃の地を誰はばかるなく
治めていける。守ってやれるのじゃ。

由布も少しはわしを認めてくれよう。




御館様・・・



勘助、そちは高野山に逃げ出した気持ち
このわしにも、このわしにはよくわかる。
わしも苦しんだ。

迷うた。

だが、わしは逃げはせぬ。
逃げられはせんのじゃ。



わしはこの甲斐国の守護・信濃の守護として
正しく領国を治めていかねばならぬ。



天下の元は国、国の元は人にありじゃ。


その人としてわしは更に正しく己が身を治めていかねばなるまい。

そこで勘助、このわしは・・・出家する。



ご出家を・・・


出家となって
この甲斐国、信濃国家臣領民全てを慈しめるよう
己を律してゆこうと思うのじゃ。




御館様
この山本勘助、御館様にお供して出家致しまする。



勘助・・・

それに一国の主として御出家なさるは
この乱世に決して無益な事ではござりますまい。

良き御思案、家臣領民は更に御館様を崇め奉りましょう。



策略でするのではないぞ。


存じておりまする。

勘助は御館様の真意を強く感じていた。






長禅寺にて武田晴信は出家を果たした。
ここに「武田信玄」となった。

これに追随する家臣がいた。


一人は原美濃守。
出家して「清岩」と号した。


今一人は真田幸隆。
出家して「一徳斎」と号した。


そして山本勘助。
彼は「道鬼」と号した。















長尾景虎は兵を率いて上洛した。



宇佐美定満に越後の留守を命じた。


そしてもうひとつ。


景虎の懸念。

関東管領となれば色々と職務が増える。

上洛、関東出兵。


その隙に必ず武田は動くであろう。

その間に武田の動きを封じる策はないのか。







その頃、宇佐美の下に一人の武将が訪れた。




村上義清の家臣・矢崎平蔵であった。


平蔵も今や四十を過ぎ
越後でヒサと共に二人の子供に恵まれて平穏に暮らしていた。


しかし、平蔵の心は満たされない。

このまま武田を討てぬまま終わりたくない。

勘助も四十を過ぎて武田家の軍師になった。

自分も勘助のように軍師になりたい。

勘助に負けぬ軍師になりたい。




そのために宇佐美様に軍学を学びたい。



諏訪の遺臣であるという事を知った上で

宇佐美は一計を以って平蔵を試す事にした。



駿河に参らぬか。


「駿河・・・」


かの地のさる寺に武田を討つべき者が潜んでおる。
御主がその者に会い誘うてみよ。


「それは・・・」


誰だか言い当ててみよ。




それは武田に滅ぼされた諏訪頼重の忘れ形見、出家した寅王丸であった。



さすれば武田の主の首も容易に討てるやもしれぬ。



そう言って宇佐美は彼方にいる敵を真っ直ぐに見据えていた―――。
















今回はビックリするくらい笑わせてくれますねぇ。


今回、信玄誕生の裏にあったのは「思わぬ伏兵」

これが鍵になっているようですね。

武田家では長尾家との和睦を持ち掛けた足利義輝。

長尾家では関東管領・上杉憲政。

そして勘助の娘の婿取り問題には太吉の妻・おくま。

これらが物語を予想外の方向に運んでくれました(笑)








でもって、笑いのポイントもまとめてみました。


●冒頭
●朝食を摂る勘助とリツとの会話にて
●真田家を訪ねた勘助
●リツの婿として太吉の息子・茂吉を勧めた勘助に対して嫌がるリツ










●冒頭

勘助の寝顔をまじまじと見つめるリツ

思わず驚いて飛び起きる勘助(笑)

お目覚めにござりまするか。旦那様。

旦那様ではない。わしはそなたの父じゃ。

これからよろしゅうお頼み申します。

とは言ったものの、ちょっとよそよそしい勘助(笑)


勘助は原美濃守の娘・リツを養女として山本家に迎えた。


外はまだ暗いようじゃの。

はい。

眠れなんだか?

いえ。

随分早起きじゃの。

『疾きこと風の如く』にございます。


これ!それは左様に軽々しく申してはならん。


どのように申せばよいのですか。


うん?・・・もっと、こう心を込めてじゃ。


勘助のナレーション(≧∇≦)b



まさか、ナレーションをオチに使ってくるとはね(笑)










●朝食を摂る勘助とリツとの会話にて

前から聞こうと思っておったが
いつ御館様からお話があった?


何を。


と、なれば・・・


貴方様の嫁になるお話ですか。

左様な事じゃ。

於琴姫様のとこでお目通りした後、
父上様から言われました。


わしとそなたが会う前か!

はい。

つらくはなかったか。

御館様がそこまでお心をかけられる貴方様に益々興を惹かれました。
私は御館様に山本家の跡取を生むように遣わされた身です。


やはり、己が不憫か。

いささか。

そうか・・・

娘をして婿をとるなどと左様に手間をかけずとも
私が生んで差し上げた方がよいのではないですか。



あまりの言葉にむせる勘助(笑)


だってさぁ。





よう考えれば三倍近く年が違うんやからねぇ(; ̄∀ ̄)


そうして、落ち着いた後に

皆が聞いておる。


戸の後ろでおくま・太吉・伝兵衛がしっかり聞き耳たてている事が
バレてましたねぇ(笑)











●真田家を訪ねた勘助


勘助、そちはどうなのじゃ。
妻との新しき暮らしにはなれたかのう。


妻ではござらぬ。

奇特な決心をしたのう。
折角向こうが妻でよいと申したのに。

そちに親としての慈愛などあるかのう。






ちょっとイタイ




お前様、くちさかない事を。
勘助殿らしいではございませんか。
年若い娘故に夫に先立たれ
長く生きるは不憫と思ったのでしょう。







こっちの方が威力大


おい、どちらがくちさかないのじゃ。



勘助殿のためにも良き婿が見つかると良いですね。
(幸隆スルー)












●リツの婿として太吉の息子・茂吉を勧めた勘助に対して嫌がるリツ



誠に嫌か。


「やっ!やっ!」茂吉、武芸の鍛錬中。


不服も何も

茂吉の何が不服なのじゃ。

そう急がずとも・・・

そちもそれ以上年を取れば、よき男がいなくなろう。

無礼な!!

伝兵衛でも良いと申すのか。

何故、伝兵衛が出てくるのです!!




・・・伝兵衛は言い過ぎた。





そこにおくま乱入。


茂吉を取られる⇒葛笠家の後継ぎがいなくなる⇒絶対反対(`Д´)


茂吉「俺ならいいぞσ(゚∀゚)」
リツ「茂吉は嫌じゃ(`Д´)!」
おくま「リツ様は嫌じゃ(`Д´)!」
太吉「おくま!!」




勘助「・・・_| ̄|○ごめんなさい」



こればっかりは流石の勘助も白旗無条件降伏です(笑)





ただ、リツにとって

旦那様と二人で過ごす事。
それがリツにとっての「幸せ」のようですからね。


しばらくはこのままの方がいいようです。





ちなみに上杉憲政の関東管領の職の譲渡についてですが
過去に他家にそのような申し出を行った事があります。


それは常陸国で勢力を強めていた佐竹家の当主・義昭です。

過去に佐竹氏は上杉家から養子を迎えて家督を継がせた
経緯があるためにそのような申し出をしたようですが
佐竹義昭はその申し出を断ったようです。

佐竹家は清和源氏の末裔。
対して上杉家は元を辿れば公家の出身。

それによって佐竹の姓を失う事を嫌がったようです。

武士の誇りってやつでしょうかね。


そうして今回
上杉憲政は景虎に関東管領の職と上杉家の名跡を譲る事を決心したようです。

これにより上杉家の家名は守られる事になりますし
山内上杉家は先の越後守護・上杉氏と同族。


つまりは上杉家が再興される形になりますからね。


意外な形で宇佐美の願いが叶ったという事になります。




さて、今回出家した勘助。





「道鬼」と号しました。


越後に潜入した際には「道安」


「道を安んずる」


しかし、勘助は「鬼の道」を選んだようです。


「鬼道」=「詭道」


なんとも勘助らしい号です(笑)








さて、ここからドンドン物語は加速していくようです。


宇佐美と勘助。
二人の対決がまた始まるようです。


ここから「川中島」は始まっています。


そして、おそらく「桶狭間」も。

こういう史実と史実の間を妄想で埋めていく。

この展開が何とも面白い限りです(^▽^)

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