龍馬伝 第43話「船中八策」
京では将軍・徳川慶喜と
四人の有力諸侯である
島津久光、松平春嶽、伊達宗城、山内容堂で
日本の行く末を決める会議が行われていた
だが、会議といってもそれは
兵庫港開港を主張する徳川と
朝廷に長州の赦免を主張する島津=反幕府の意見を主張するだけのものだった
容堂は呆れた。
お互いに自分勝手なことばかり主張しない
うんざりだった。
容堂はこんな者達がいる京にいたくなかった。
その頃、島津久光を三人の男が説得をしていた
幕府との話し合いなど無駄
これよりは武力倒幕を目指すべきであると
その三人の男とは
家老・小松帯刀、西郷吉之助、そして大久保利通であった



容堂が上洛したと聞いて
後藤と龍馬は海路で以って京に向かった。
その船の中で、龍馬は
今までに出会った色々な人々に教えてもらったことを
自分なりにまとめたことを紙にしたためた
それを見た後藤は驚愕した。
それは画期的なものであり
亡き伯父・吉田東洋が目指していたものでもあった
京にある土佐藩邸についた後藤と龍馬であったが
肝心の容堂公は既に土佐に帰った後であった。
この先、どうするかと思案に暮れる龍馬の前に陸奥が現れた。
海援隊の仕事場が見つかったので見て欲しいと言う
躊躇する龍馬であったが
これもまた大事な仕事だと陸奥に諭されて
龍馬は陸奥と共にその場所に向かうことにした
ただ、今の武士の格好で京の町を歩くと
新撰組や見廻組に目をつけられてしまうので
二人は農民に変装して市中を歩いた。
だが、それでも新撰組の目を誤魔化すことは出来なかった。
久しぶりじゃの、近藤さん
坂本!!!

逃げる坂本と陸奥を追う近藤ら新撰組
多勢に無勢で明らかに劣勢だった。
そこに突然誰かが煙幕を投げ込んだ
中岡慎太郎だった。
中岡は龍馬らを連れて、その場から逃げ出し
中岡が懇意にしてる相撲部屋に身を潜め、どうにか
新撰組からの追っ手をやりすごした。
そこで中岡は龍馬にこう切り出した
実はの、西郷さんが後藤象二郎さんに会いたいと言われちゅう
手を結びたいやったら顔と顔を合わせて話し合うべきぜよ
それは願ってもない話じゃ
龍馬はすぐさま土佐藩邸にいる後藤様にそのことを報告した。
後藤様
西郷さんが後藤さんに会いたいという
これは大政奉還をする絶好の機会じゃ
西郷は土佐を戦に巻き込むつもりじゃないかえ
おそらくそのつもりですろ
けんど、後藤様
これは薩摩と土佐の知恵比べじゃ
土佐が武力倒幕に加わると思うてもええ
大政奉還を目指すと言わせたら、わしらの勝ちじゃ
六月
三本木の料亭にて土佐と薩摩の重役が顔を合わせた
土佐からは
後藤象二郎、寺村左膳

薩摩からは
小松帯刀、西郷吉之助、大久保利通



仲介人として
坂本龍馬と中岡慎太郎が同席していた


大政奉還を目指す土佐と武力倒幕を目指す薩摩
両者は正反対だった
後藤さ、土佐が薩長に加わると聞いた時は100万の力を得たようでした
けど、どうも土佐の皆さんのお方のお顔はわしらと違う方向にむいておわんどな
西郷どん、戦を言うがはするぞするぞと脅しをかけて相手を降参させる
それが見事な勝利というもんですろ
つまり、大政奉還ですか
これが土佐の考えです
山内容堂公はご存知ですか?
後藤がその件で語ろうとしないのを見て西郷は悟った。
土佐はまだまだひとつになっておられんようですな
大政奉還は容堂公が受けられるはずがない
後藤様の考えもおいはよう分かる
小松さん、ここは後藤様の考えに乗ってみましょうか
後藤様の考えに乗ってみてはよかち
それはよかち。
それは薩摩と共に武力倒幕を考えていた中岡にとって
薩摩の回答は意外なものであった。
そうして薩摩は後藤様の意見に賛同する事になった
ただし
大久保利通が語る。
ただし大政奉還がならんかった時には徳川との決戦です。
その御覚悟を
戦になった時には当然土佐藩にも挙兵してもらいます
つまりは薩摩は大政奉還が絶対にならないとして
武力倒幕に向けて土佐藩を戦力に加えたいという考えらしい
約束しよう
今日はよかち日になりもうした
薩摩は大政奉還に協力する
けんど、失敗した場合、土佐は武力倒幕に参加する
それは両者の思惑が交じり合った複雑な約束であった。
その日、龍馬は中岡にあの紙を見せた。
中岡もまた後藤と同じく驚愕していた。
一.天下の政権を朝廷に返還すること
―――――これは木戸さんから教えてもらったこと
一.上下2つの議院を作り政を進めていく
―――――これは横井小楠さんから教えてもらったこと
一.公卿、諸侯を顧問に備え身分が低くても才のある者は登用すべし
―――――これは吉田東洋様が語られたこと
一.異国との約定は対等でなければならない
―――――これは高杉さんが目指したもの
一.古来の律令を折衷して新たな大典を選定すること
―――――これは土佐の河田小龍先生が言われてたことだ
一.海軍の拡張を行うこと
―――――これは勝麟太郎先生が目指したもの
一.親兵でもって、都を守衛すること
―――――これは武市さんの志だ
一.金銀物価を外国と平均の法を設ける
―――――これは久坂玄瑞さんが言われたこと
※2010/10/25 19:32
YTさんのご指摘により修正しました。
わしが作りたい世の中は
上士も下士もない平らな世の中ぜよ
誰かが誰かを支配する世の中は怨みを買う
わしはこの八つの策を行うことで
誰もが笑うて暮らせる国になるとそう信じちゅう
ほうじゃき、戦で幕府を倒してはいかんぜよ
そんな国になってくれたら
わしは日本がそんな国になってくれたら―――――
けんどの、龍馬。それはいかんじゃ
今の仕組みにすがっちゅう者は決して認めようとせんろ
そうじゃろの
それを世に出したら殺されるがじゃ
中岡。
命を狙われるくらいのことをせんと
日本は変わらんぜよ
そうじゃろ
そう言って龍馬は笑った
この龍馬が残した八策は
明治政府の根幹となっていく
だが、これが益々龍馬を危険に晒した
龍馬暗殺まで五ヶ月を切っていた―――――。
今回はあの船中八策
これが龍馬が今まで出会った人の考えを
まとめたというところが一番のポイントで面白いところですね。
龍馬はそうして
時代を変えようとして志半ばで散っていった人達の思いを
この八策に込めたようにも感じられるところでしたね。
あれは実によかったです。
それと同時並行で弥太郎のことが描かれてましたね。
土佐商会で一目置かれるようになった弥太郎。
けれども、結局は参政・後藤象二郎の尻拭いばかり。
今までならば藩の人間だから仕方ないと思っていたけれど
この事が弥太郎にとって「理不尽」だと思えたのでしょうね。
そこで弥太郎が考えたのが自分で好き勝手に商売をすること
つまりはイギリス式の商売
弥太郎もまた新しい世界に足を踏み入れようとしていたということですね。
でもって、一番のビジネスチャンスは
戦争=武器
というトコロになってくるんでしょうね
一方で、他のイギリス商人と同じように日本人を軽蔑していたグラバーも
龍馬をはじめ、近藤長次郎など
名もなき若者達がこの国を変えようと懸命になっている姿を見て
考えを変えたみたいで、この事がグラバーを後に
三菱の顧問になっていく要因のひとつでもあったんでしょうね。
いやぁここまでの展開の密度の濃いこと
また、意外に及川さんの大久保利通もよかったですね。
あの寡黙さに加えて
交渉の場では本音というか、核心を切り出す
あの辺に西郷とはまた違った怖さがありますかね。
近藤さんを見た後でも違和感がなかったです ̄▽ ̄b
次回からは更なる怒涛の展開、実に楽しいです。
四人の有力諸侯である
島津久光、松平春嶽、伊達宗城、山内容堂で
日本の行く末を決める会議が行われていた
だが、会議といってもそれは
兵庫港開港を主張する徳川と
朝廷に長州の赦免を主張する島津=反幕府の意見を主張するだけのものだった
容堂は呆れた。
お互いに自分勝手なことばかり主張しない
うんざりだった。
容堂はこんな者達がいる京にいたくなかった。
その頃、島津久光を三人の男が説得をしていた
幕府との話し合いなど無駄
これよりは武力倒幕を目指すべきであると
その三人の男とは
家老・小松帯刀、西郷吉之助、そして大久保利通であった



容堂が上洛したと聞いて
後藤と龍馬は海路で以って京に向かった。
その船の中で、龍馬は
今までに出会った色々な人々に教えてもらったことを
自分なりにまとめたことを紙にしたためた
それを見た後藤は驚愕した。
それは画期的なものであり
亡き伯父・吉田東洋が目指していたものでもあった
京にある土佐藩邸についた後藤と龍馬であったが
肝心の容堂公は既に土佐に帰った後であった。
この先、どうするかと思案に暮れる龍馬の前に陸奥が現れた。
海援隊の仕事場が見つかったので見て欲しいと言う
躊躇する龍馬であったが
これもまた大事な仕事だと陸奥に諭されて
龍馬は陸奥と共にその場所に向かうことにした
ただ、今の武士の格好で京の町を歩くと
新撰組や見廻組に目をつけられてしまうので
二人は農民に変装して市中を歩いた。
だが、それでも新撰組の目を誤魔化すことは出来なかった。
久しぶりじゃの、近藤さん
坂本!!!

逃げる坂本と陸奥を追う近藤ら新撰組
多勢に無勢で明らかに劣勢だった。
そこに突然誰かが煙幕を投げ込んだ
中岡慎太郎だった。
中岡は龍馬らを連れて、その場から逃げ出し
中岡が懇意にしてる相撲部屋に身を潜め、どうにか
新撰組からの追っ手をやりすごした。
そこで中岡は龍馬にこう切り出した
実はの、西郷さんが後藤象二郎さんに会いたいと言われちゅう
手を結びたいやったら顔と顔を合わせて話し合うべきぜよ
それは願ってもない話じゃ
龍馬はすぐさま土佐藩邸にいる後藤様にそのことを報告した。
後藤様
西郷さんが後藤さんに会いたいという
これは大政奉還をする絶好の機会じゃ
西郷は土佐を戦に巻き込むつもりじゃないかえ
おそらくそのつもりですろ
けんど、後藤様
これは薩摩と土佐の知恵比べじゃ
土佐が武力倒幕に加わると思うてもええ
大政奉還を目指すと言わせたら、わしらの勝ちじゃ
六月
三本木の料亭にて土佐と薩摩の重役が顔を合わせた
土佐からは
後藤象二郎、寺村左膳

薩摩からは
小松帯刀、西郷吉之助、大久保利通



仲介人として
坂本龍馬と中岡慎太郎が同席していた


大政奉還を目指す土佐と武力倒幕を目指す薩摩
両者は正反対だった
後藤さ、土佐が薩長に加わると聞いた時は100万の力を得たようでした
けど、どうも土佐の皆さんのお方のお顔はわしらと違う方向にむいておわんどな
西郷どん、戦を言うがはするぞするぞと脅しをかけて相手を降参させる
それが見事な勝利というもんですろ
つまり、大政奉還ですか
これが土佐の考えです
山内容堂公はご存知ですか?
後藤がその件で語ろうとしないのを見て西郷は悟った。
土佐はまだまだひとつになっておられんようですな
大政奉還は容堂公が受けられるはずがない
後藤様の考えもおいはよう分かる
小松さん、ここは後藤様の考えに乗ってみましょうか
後藤様の考えに乗ってみてはよかち
それはよかち。
それは薩摩と共に武力倒幕を考えていた中岡にとって
薩摩の回答は意外なものであった。
そうして薩摩は後藤様の意見に賛同する事になった
ただし
大久保利通が語る。
ただし大政奉還がならんかった時には徳川との決戦です。
その御覚悟を
戦になった時には当然土佐藩にも挙兵してもらいます
つまりは薩摩は大政奉還が絶対にならないとして
武力倒幕に向けて土佐藩を戦力に加えたいという考えらしい
約束しよう
今日はよかち日になりもうした
薩摩は大政奉還に協力する
けんど、失敗した場合、土佐は武力倒幕に参加する
それは両者の思惑が交じり合った複雑な約束であった。
その日、龍馬は中岡にあの紙を見せた。
中岡もまた後藤と同じく驚愕していた。
一.天下の政権を朝廷に返還すること
―――――これは木戸さんから教えてもらったこと
一.上下2つの議院を作り政を進めていく
―――――これは横井小楠さんから教えてもらったこと
一.公卿、諸侯を顧問に備え身分が低くても才のある者は登用すべし
―――――これは吉田東洋様が語られたこと
一.異国との約定は対等でなければならない
―――――これは高杉さんが目指したもの
一.古来の律令を折衷して新たな大典を選定すること
―――――これは土佐の河田小龍先生が言われてたことだ
一.海軍の拡張を行うこと
―――――これは勝麟太郎先生が目指したもの
一.親兵でもって、都を守衛すること
―――――これは武市さんの志だ
一.金銀物価を外国と平均の法を設ける
―――――これは久坂玄瑞さんが言われたこと
※2010/10/25 19:32
YTさんのご指摘により修正しました。
わしが作りたい世の中は
上士も下士もない平らな世の中ぜよ
誰かが誰かを支配する世の中は怨みを買う
わしはこの八つの策を行うことで
誰もが笑うて暮らせる国になるとそう信じちゅう
ほうじゃき、戦で幕府を倒してはいかんぜよ
そんな国になってくれたら
わしは日本がそんな国になってくれたら―――――
けんどの、龍馬。それはいかんじゃ
今の仕組みにすがっちゅう者は決して認めようとせんろ
そうじゃろの
それを世に出したら殺されるがじゃ
中岡。
命を狙われるくらいのことをせんと
日本は変わらんぜよ
そうじゃろ
そう言って龍馬は笑った
この龍馬が残した八策は
明治政府の根幹となっていく
だが、これが益々龍馬を危険に晒した
龍馬暗殺まで五ヶ月を切っていた―――――。
今回はあの船中八策
これが龍馬が今まで出会った人の考えを
まとめたというところが一番のポイントで面白いところですね。
龍馬はそうして
時代を変えようとして志半ばで散っていった人達の思いを
この八策に込めたようにも感じられるところでしたね。
あれは実によかったです。
それと同時並行で弥太郎のことが描かれてましたね。
土佐商会で一目置かれるようになった弥太郎。
けれども、結局は参政・後藤象二郎の尻拭いばかり。
今までならば藩の人間だから仕方ないと思っていたけれど
この事が弥太郎にとって「理不尽」だと思えたのでしょうね。
そこで弥太郎が考えたのが自分で好き勝手に商売をすること
つまりはイギリス式の商売
弥太郎もまた新しい世界に足を踏み入れようとしていたということですね。
でもって、一番のビジネスチャンスは
戦争=武器
というトコロになってくるんでしょうね
一方で、他のイギリス商人と同じように日本人を軽蔑していたグラバーも
龍馬をはじめ、近藤長次郎など
名もなき若者達がこの国を変えようと懸命になっている姿を見て
考えを変えたみたいで、この事がグラバーを後に
三菱の顧問になっていく要因のひとつでもあったんでしょうね。
いやぁここまでの展開の密度の濃いこと
また、意外に及川さんの大久保利通もよかったですね。
あの寡黙さに加えて
交渉の場では本音というか、核心を切り出す
あの辺に西郷とはまた違った怖さがありますかね。
近藤さんを見た後でも違和感がなかったです ̄▽ ̄b
次回からは更なる怒涛の展開、実に楽しいです。
この記事へのコメント
時代を変えようとして志半ばで散っていった人達の思いを
この八策に込めたようにも感じられるところでしたね。
そうですね~。
船中八策の中に、今まで出てきた登場人物の思いが込められている
と言う作り方は良かったです^^
思わずウルっときました(; ;)
たくさんの人たちが考え、願望叶わずに散ってしまった物を
龍馬は形にし、それが今の私達が暮らしている時代を作る
元になったと言うのは感慨深いです。
そういう意味では、坂本龍馬って本当に凄い人だったんだな、と
しみじみ感じてしまうお話でした(。-_-。)
中岡さんの描かれ方はどうあれ。。。(-_-;)
ミッチーは、意外と武士の顔してましたね(⌒▽⌒)
古来の律令~これは河田小龍
親兵で~これは武市さん
金銀物価~これは久坂さんです。
それはともかく、自分的には未来に対するビジョンがないと言うオールトと
船中八策を書き上げた龍馬との対比が面白かったです。
そうですねぇ。
船中八策の文言には龍馬がこれまで
出会った人の思いとその人に受けた感銘が
込められているのが印象的ですね。
あれを読んだ人の驚きは
正に当時の龍馬の驚きそのものなんでしょうね。
ここにいたるまでの伏線は実に見事でした。
中岡の描き方はたしかにねぇ ̄▽ ̄
ミッチーは結構武士というか
あの姿でも切れ者って感じが伝わってきました。
ご指摘どうもです。