リミット 刑事の現場2 第2話 「偽善者」

愛知県では麻薬取締強化月間のため
各署で麻薬の摘発数を伸ばしているが
中央署は麻薬の摘発数が伸びずにいた。

毎年、中央署では麻薬の摘発数がトップだった。

そのトップの座を死守するために中央署では
署をあげて捜査に乗り出していた。


そんな中、ホームレスが火事で亡くなるという事件が起きた。


その様子を見ていた人がたくさんいたが
皆、それを遠くから眺めていた。


ホームレスは公園を不法に占拠していたとして
周辺の住民から苦情が出ていた


火元の近くから焼け焦げたコンロなどがあった事から
事故だろうと判断した。

事件性はないと思われるが
念のため、聞き込みをする事を加藤と梅木は命じられた。


周辺の住民から聞き込みをした。

町内会長や主婦、女子高生、老人等々。


「夜は出ない事にしているもので。」

「さぁねぇ。」

「あれは火事だったんでしょ。」

「自業自得じゃないんですか。」

「関係ないですし。」

「もういいでしょ。」

「私は何も知りませんから。」


そこから事件性を感じられるものがなかった加藤は
課長に報告、この事件は事故として処理される運びとなり

加藤は今、署で行っている麻薬捜査に参加する事になった。


その時、加藤に梅木が声をかけた。


随分嬉しそうだな。
麻薬捜査に加えてもらって。

ホームレスなんかどうでもいいやぁか。



あれだけ聞き込みしても事件性があるとは思えません。


だったら何故付近の住民には聞き込みやって
仲間のホームレスには聞き込みやらなかった?

お前も上の連中と同じだ。
この事件を舐めている。
ホームレスなんか公園を不法占拠している
違法居住者だと決め付けている。
そんなやつらのために真面目に捜査をするのが
馬鹿馬鹿しいんだろ。



その日、加藤は梅木が言った言葉が
一晩中頭から離れなかった。

俺は何のために中央署に来たんだろう。
ちゃんと仕事がしたいだけなのに。



啓吾の言葉に茉莉亜は応える。

啓吾にしか出来ない事が必ずある。

私だって啓吾がいなかったらどうなっていたか、分からなかった。

私は刑事である啓吾を応援する。









翌日、加藤に伊坂が声をかけた。


掲示板の変な書き込みがあった。
それは犯行を予告させるようなものだった。

これが事件と何らかの関係があるのではないかと考えた啓吾だったが


課長達にはこの程度の事に人を回す余裕なんてないと一蹴された。



それからすぐ加藤は梅木に呼ばれた。

麻薬の取り締まりのためだと言って
梅木が向かったのは、とあるパチンコ店だった。


その店にいた男達が
あの日のホームレスの事件で防犯カメラの映像に
映っていた事から梅木は彼らに目をつけていた。

彼らを取り調べた結果
男達は動画を撮っていたらしい。


加藤はその動画をもらい警察に持ち帰って調べていた。

そこに映っていた人物に梅木は見覚えがあった。


田宮睦男
強盗窃盗傷害の前科があり、借金を抱えていた。





「俺がやったっていう証拠があるんですか?」

田宮の言葉に対して

加藤は田宮がねぐらにしているネットカフェで
「社会に不必要なもの、何でも処分します」と
ネットに書き込んでいた事を調べ上げていた。

更に事件の同じ日に、仕事を依頼した者がいたという。



それでも知らないと言い張る田宮に対して
梅木はライターの火を田宮の顔に近づけた。

被害者は熱かっただろうな。
被害者は苦しかっただろうな。
同じ目に遭わすにはこれだ。

熱かったろうな。
苦しかっただろうな。



その火を見て、当時の事件の恐怖が蘇ったのか
田宮は震えながら喋り出した。


「まさか、死ぬとは思わなかったんだよ。」

「許してくれよ、俺は頼まれただけなんだよ。」



しかし、加藤は梅木のそんな強引な捜査方法に
これ以上、我慢がならなかった。


俺、梅木さんの事を誤解してましたよ。
犯人を捕まえるためにはどんな手段を選ばないとかいうけど
自分勝手な思い込みで人に迷惑かけたり傷つけてるだけでしょ。

本当はきっと貴方のこと、優しい人なんだろうなと思ったけど
そうじゃなかった。

単に凶暴で人をいたぶったり苦しめたりするのが好きなだけだ。
俺は絶対に間違ってると思いますよ、貴方は。





翌日、放火殺人犯を逮捕した加藤は実行犯を逮捕し
その男に犯行をメールで依頼した人物がいると課長に報告した。


警察はあの「粗大ゴミを始末してくれ」と書かれたメールの内容じゃ逮捕は難しいと判断した。

そこに「殺してくれ」とは書かれていない。

それに今の警察は麻薬取締摘発数にやっきになってそれどころではないらしい。




俺は事件にめんどくさいものなんて、ひとつもないと思います。


被害者や家族に同じ事が言えますか。

俺の知り合いに突然大切な者を失った人がいます。
将来を共に生きようとしていた方が突然目の前で
何の意味もなく殺されたんです。


それが茉莉亜だった。

なんとか立ち直ったように見えても
まだ、事件の事が忘れられずに苦しんでいます。

俺達、刑事も
その不条理に殺された人達の悔しさや悲しさ
遺された人たちのつらさややりきれなさを
忘れちゃいけないんでしょうか。






それから加藤の下に伊坂がやってきた。

例の実行犯にメールを送った相手が特定したと言う。






加藤は梅木と共にその男に会いに行った。



その男は昔からこの公園で遊んでいる子供達を見るのが好きだった。



加藤はその男にホームレスのダンボールに放火した犯人を逮捕したと伝えた。

その男は何故、あんな事をやったんでしょうね。


あんたに頼まれたからだっつてんだ。
報酬としてあんたから30万円もらったと言ってる。



署まで御同行願えますか。



・・・・・私のせいじゃない。
私のせいじゃないんだ。

随分前から何度も何度もお願いしてたんですよ。
でも、警察も役所も生返事と先送りばかりで何にもしてくれなかった。

ホームレスって言うのは
みんなの公園を不法占拠してるいわば、犯罪者なんですよ。
だいたいホームレスの家ってただのゴミの山でしょうが。
そんなもの、どう整理したっていいじゃないですか。
なんで罪に問われなきゃいけないのか。



中に人がいる事もわかっていて放火をお願いしたんでしょ。
殺してしまう可能性があったって事もわかってたんじゃないですか。
罪を認めて自首してもらえませんか。



男は語る。
この公園はね、みんなで作ったんですよ。
道路で遊ぶと危なくて、孫が怪我した事があったから
二度とそんな事がないようにみんなで作った公園なんです。
みんなのための公園なんです。

ホームレスのネグラにするためにあるんじゃない。
いいじゃないですか。
ホームレスの一人や二人、死んだっていいじゃないですか。
誰が困るんですか。




あんたの言うとおりかもしれねぇな。
あんたのその理屈、聞かせたいやつがいるんだ。

付き合ってもらおうか。




梅木がその男を連れて行った場所。

それは先日の放火事件で亡くなった
ホームレスの遺体が安置されている真っ暗な部屋だった。



あんたが殺した男だ。
身元が分からないから明日、福祉課に引き取られて
こいつはもう一度火葬場で焼かれる事になる。

弔うやつがいないから葬式も何もねぇ。
俺達で手向けの言葉を送ってやろうぜ。

こいつにもう一遍さっきの言葉を言ってやれよ。

お前なんか死んだって悲しむやつなんか誰もいない
お前なんか社会の厄介者だ。
公園を不法に占拠してる犯罪者だ
お前なんか死んで当然だって言ってやれよ。


言ってやれよ。


さんざん偉そうな理屈を並べやがって。

こいつはゴミか?違う!

人間だ。

妙な事をチンピラに頼まないで
公園をキレイにしたければ自分の手を汚して
掃除すればよかったんだ。

こいつのダンボールに火をつける事になって
堂々と「火をつけますよ」とこいつに言えば
こいつだって逃げる暇があったんだ。

言ってやれよ。
こいつに生きる価値がないって。



男は遺体を見て嗚咽した。
その姿にたまらず加藤は彼をかばった。


俺もあなたと一緒ですよ。
ホームレスなんて仕事もせずにブラブラしてただの怠け者だって
俺だったらあんなみっともない姿にまでなって生きていようとは思わない。
だったら死んだ方がマシだって。

俺があなたでも同じようなことを考えたかもしれません。
でも、でもね。

やっぱり、それって間違ってると思いません?

だって、あんなやつ死んじゃえってみんな殺してたら
それこそ、動物と変わんないですよ。

大変な事だったかもしれないですし
簡単じゃなかったんだと思いますけど
あなただったらホームレスとちゃんと話をして
何とかいい解決方法を見つけられたんじゃないですかね。


だって、俺達人間なんですよ。



加藤はおもむろに部屋の扉を開けた
真っ暗な部屋に光が差し込む。


あんた、なげぇ事生きてきた割には大事な事を忘れてる。
人間は死ねば消えていく。

だが、殺された人間は消えない。

殺された人間は死なねぇんだ。

殺した人間のせいでずっと生きてる。

ここで罪を認めて
ここから人間らしく生きるか

それとも

ここから逃げて偽善者として生きていくか。

選べ。




男は扉にかけよった。

しかし、立ち止まるとわなわなと身体を震わせ泣き崩れた。
それ以上、男は進む事が出来なかった。




本当にやったの?
普通はやらないわよね。


どいつもこいつも勝手なもんだな。

なんでしょうかね、刑事って。
何なんですかね。


刑事を長い事やってるとわかる

人間の善や良心なんてアテにならない。
俺達の仕事は人を憎む事だ。
人を本気で憎んで憎んで憎み切る

それが刑事の仕事だ。

人は愛するもんじゃない。

人間はもう駄目かもしんねぇな。








その夜、啓吾は夢にうなされた。
自分もまた偽善者であり人殺しではないのだろうかと。



こんな世の中に生まれてきて、本当に幸せなのかな。この子が。

私もたまに怖くなる事ある。
自分みたいなのが母親になれるのかなって。

啓吾やこの子のこと、幸せに出来るかな。



きみはいい母親になるよ。

きみは本当に俺と結婚したい?
幸せ?


当たり前でしょ。


あの絵を描いてもらった頃より?

彼女の言葉が詰まる。


・・・・・ごめん。今のなし。

俺、あの絵好きなんだもん。

俺はきみが傍にいてくれるだけで幸せだから。
一緒にいてくれるだけでいいから。
本当だよ。



啓吾も好きな彼女の絵
それは彼女の亡くなった彼が描いたものだった。





その翌日、署では梅木は職務質問したら麻薬を持っていたとして一人の男を逮捕していた。
それは中央署が容疑者として追っていた男だった。




その後、今回の放火事件に対して課長は今後は逐一報告するように注意された。


加藤は課長に尋ねた。

課長は何のために刑事をやっているんですか。
また、生まれ変わっても刑事になりたいですか。


俺はただ梅木さんと出会って分からないだけです。
俺はどんな刑事になりたいのか。


課長は何も答えなかった。




それから加藤は梅木と課長が会話している光景を見た。


梅さん。
もしかして加藤を自分のような刑事にしたいと思ってるんじゃないでしょうね。
それとも昔の部下が課長になっていることのあてつけですか?



人間、出世すると色々な事を考えて大変だな。

そう言ってその場を後にする梅木に対して課長はなおも言葉を続けた。


あいつ、もうすぐ出てくるそうですよ。
仮釈放が決まって。



梅木の動きが止まる。
いくら貴方の婚約者を殺した男でもあれから18年も経つんです。
まさか本気で殺そうなんて思ってないでしょうね。



梅木は振り返り、課長の目を見据えた。
殺す。

俺はそのために今日まで生きてきたんだ―――――。












ホームレスが放火によって殺害されてしまった事に
痛ましい事件とは思うものの

そのホームレスが自分の近所で
住民から迷惑をかけているような存在だった時に

果たしてそう思えるのかどうか


課長代理が語る
「ちょうどよかったじゃないか。」

って言葉が一番正直な思いに見えてきます。


でもって
古来よりこの国には穢れによる文化があり

穢れには自分が触れないようにし
代わりの誰かにそれを処理してもらうという

例えば疫病の根源となるネズミに対して
ネコはネズミを駆除する存在でしたが
ネコはネズミ=穢れを駆除する存在として
同時に嫌われていたとも言われています。

おそらく、その穢れがうつるかもしれないと
考えたのかもしれません。


今回の事件に関しても
地域の住民達はホームレス=穢れを排除するように町内会長に求めた。

そうやって嫌な事を全部町内会長に押し付けて。

そして、町内会長は「便利屋」を提案した。

そして町内会長も「便利屋」に手を汚してもらう事になる。

そうしてみんな自分の手を汚したくないという事なんでしょうね。





何にしてもその自分勝手な理屈を述べる人に対して
加藤と梅木、それぞれが「同じ言葉を被害者に言えますか」って言葉をとってみても
二人は本質は似ているなって感じがしていますね。




さて、次回は啓吾が「ダークサイド」に墜ちていくようで。
今後の啓吾の壊れ具合が非常に気になります。

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この記事へのコメント

みのむし
2009年07月20日 09:53
観てみましたよ。
面白かったです。
平然とホームレスが死んでいくのを見ている住民が
怖いって思いました。
でもみんながそれぞれ心の中に持ってる感情でも
ありますよね。
いやぁ。面白かったです。
まだまだ梅木にも加藤にも闇の部分がありそうですね。
しとろえん
2009年07月20日 16:39
NHKらしい社会派的な切り口、真っ当な演出。役者の使い方もうまさを感じます。酸っぱい作品にはなってない。(笑
「少年たち」「ハゲタカ」「監査法人」などこういう現代を切るのはドラマにおいても民放ではもう難しいのかもしれません。
「臭いものに蓋」という文化の国ではありますが、「掃き溜めに鶴」とか「枯れ木も山の賑わい」とか多様な価値の視点がまだ昔は存在しえたわけですから、原点回帰のきっかけさえつかめればまだ救いはあるとは思うのですが。
とにかく、武田さんの裏の顔とか加藤あいさんの微妙な演出とか大胆な若村さんの回しとか見所は満載ですねえ。
キッド
2009年07月20日 18:23
ikasama4様、こんばんは。
ものすごく迫力のあるドラマなんですが・・・
それは結局刑事ものなんですよね・・・。

加藤と梅木の差は結局
運命を受け入れるものと受け入れられないものの話。
運命には善悪がなく
殺人者になる運命に生れただけに過ぎない。
つまり罪を憎んで人を憎まずです。

それが真理ですが・・・しかし
それもまた受け入れられない運命に出会っていないものの理屈にすぎない
・・・と梅木は言うわけです。
俺になってみないと俺の気持ちはわからないだろうという
自己中心的な世界観。
そこには独善があり独悪がある。

この対立は不毛で水掛け論なのですが
そのギリギリの部分にふみこんでいく迫力があるようです。
まあ・・・裏が裏だけに落差に眩暈を感じますけど。(; ̄∀ ̄)ゞ

ikasama4
2009年07月21日 01:03
みのむし様
「偽善」は誰にでもある思いなんでしょうね。
ただ、梅木の場合は
恋人の死によって、自分に送られる言葉に
「偽善」を嫌という程、感じたために

自分の中で「偽善」は使わないように
してるのかもしれませんね。

そのことで苦悩する啓吾が
どうなっていくのか、とても気になりますね。
ikasama4
2009年07月21日 01:03
しとろえん様
「偽善者」という言葉で
事件に関係する住民達の行動のみならず

「殺された人は死なない」という梅木の言葉を
啓吾といることで幸せだという彼女が
前の彼氏の時よりも幸せという問いかけに
言葉を詰まらせる事で梅木の言葉を痛感し

また彼女のその言葉が
「偽善」ではないかと悩ませる啓吾を見せる
演出は上手いです。

若さ故の苦悩、そうして翻弄されるうちに
徐々に壊れていきそうな啓吾を演じる
森山さんの迫力がスゴイですね。

民放ではこういう台詞回しとかは
まず、無理でしょうね。

特に最近の民放はみんなして
数字至高主義で右に習えみたいな感じですからね。

デーブ・スペクターに日本のドラマは
不毛地帯と揶揄されましたが
日本のドラマが抱える問題について
危機を打破しようとする意識=原点回帰がある限りは
私もまだ大丈夫だと思います。
ikasama4
2009年07月21日 01:04
キッド様
こんばんはです。

法として罪を償えば
法律上、それで全てが終わる。

それを受け入れられないというのは
法治国家としてはあってはならない
それが刑事であれば尚更

というのが、言い分としては考えられますが

果たして自分の家族が理由もなく
殺された時、その言い分を貫けるのか

という事を言いたいのかもしれません。

まぁそれは見方によっては
身勝手な理屈とも言えなくもありません。

ですが、単純なメッセージ性のドラマに
終わっていないのがいいです。

武田さんの持つ言葉に対して
森山さんが全然負けていません。

徐々に狂気に足を踏み込んでいく森山さん

そういった雰囲気が画面から伝わってきます。

裏は見ない方が身体によさそうですね(; ̄∀ ̄)

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