フルスイング 第1話 「再びの、夢」

高畠導宏さん
30年間プロ野球の打撃コーチ一筋に生き
彼が育てたタイトルホルダーはのべ30人になります。

とにかくやり続ける。
何事も諦めない。




これは高畠さんの晩年をモデルにした物語です―――。



パ・リーグの球団で打撃コーチをしていた高林
フロントよりの突然の契約打ち切りの通告を受けた。

「普通の会社なら58歳は定年だと。」


容赦のないフロントの仕打ちに夢を失い
失意の日々を夫にかつての先輩からの突然の話。


それは教員免許をとってはどうかという話だった。

以前、高林はコーチ時代に選手の指導に役立てたいと
教育論を勉強していた。

かくして誕生した
フレッシュな教育実習生・58歳(笑)


天童は高林に尋ねた。
あなたは本気で教師になるつもりがありますか?


コーチをリストラされたショックから立ち直るために
気分転換で受けた話だった。

高林は何も答える事が出来なかった。



天童先生の授業を見学する事になった高林先生。

そこで天童は高林に15分の時間を与え
授業をするように言った。

たくさんの生徒を前にして
高林は戸惑いながら咄嗟に黒板に文字を書いた。

「夢」

人生で一番大切なものは「夢」です。
それをわしに教えてくれんかな。



「サラリーマン」
「とりあえず食べていければよか」
「女性警察官」



適当に夢を答えていく生徒達。

でも、次に尋ねた生徒は何も答えなかった。


沈黙からざわめきが起こる。

その様子に高林はただただ戸惑っていた。
まるで敵に囲まれた気分だった。



それから高林はたくさんのノートを買った。

コーチ時代、高林は敵の球団と戦う時に
敵選手のデータを集めて対処法を考えていた。

だから今回も
敵を知るにはまずデータ集めと思ってノートを買った。


その高林の行動に時任先生は共感した。

同感です。教室は戦場、生徒は手強い敵です。
隙を見せれば撃ちかかってくる。弱いと見れば容赦もありません。






それから高林は早速ノートに生徒の名前を書き記すことにした。

が、肝心の生徒の名前を聞くのを忘れていた。
さっきの生徒の名前は何だったのだろう。

そう思っていた時、偶然屋上に訪れた大田先生から
その生徒の名前を知る事が出来た。



彼の名前は森和人。

教師全員、森君には手を焼いているらしい。
授業に全く参加しない。
心を誰にも開かない。

彼の両親は続け様に蒸発してしまった。

一家離散。

森君は親戚の家に預けられてそこから学校に通っていた。




どう接しているんですか。

高林は大田先生に尋ねた。

それなりに頑張ってきたけれど
大田先生もどうしていいかわからなかったらしい。

それに教師が生徒一人のために
授業のペースが乱されては他の生徒の迷惑になってしまうからと。





その時、高林は思った。


自分はある日、突然30年生きてきた夢を失った。

夢のない人生は消化試合のようなものだ。

だから咄嗟に聞いてみた。

子供達の夢を。


そして、一人自分の夢を見失った子供を見つけた。
そんな子供達を見て高林は改めて思った。


生徒は敵なんかじゃない。




それから、高林は森君に声をかけた。

それでも森君は応えない。



そんな様子を見兼ねて天童先生は高林に尋ねた。


森君は鍵をかけて閉じこもっている
それをあなたは無理矢理鍵をこじ開けようとしている。
その鍵を壊したその後、あなたは森君をどうするつもりですか。

教育実習が終われば、あなたはここを去る
そして森君は一人になる。

もう一度聞きましょう。
あなたは本気で教師になるつもりがありますか?

卒業した後も生徒は先生を頼る。
生徒と一生付き合う覚悟

それが教師の覚悟です。

あなたにおありですか。




かけた鍵の開け方がわからんのじゃないかとわしには思うんです。

だから、わしは連れ出したいんです。

心の底から笑わしてやりたいんです。


それは
教師としての覚悟ですか。


人間としての覚悟です。






高林はその夜、妻から送ってもらったノートを見ていた。
それは敵選手ではなく味方選手に対して書き綴ったノート

そこである言葉が目に止まった。



大きな耳

小さな口

優しい目



高林は思い出した。

コーチ時代

「教えん事」

それが自分の信念だった。


選手が苦しんで悩んで「指導して下さい」というまで待つ


大きな耳

小さな口

優しい目



で待つんです。

だから、森君も待つ事にしました。


わしは子供らが可愛い
あの子らの味方になってやりたいと。




時任先生もかつては高林と同じ事を思っていた。
彼女は教師になるのが夢だった。
教師になって子供達の味方になれる先生になりたいって。

でも、現実は違う。

彼女が買われたのは剣道の腕。
桜台の名前を売るために雇われた広告塔が自分の役目だったと。



しかし、高林は喜んだ。

夢は教師
あなたはその教師になったじゃないですか。


大丈夫じゃ大丈夫、大丈夫。


いつのまにか時任も高林の生徒のようになっていた。




そして、高林はある行動を始めた。
子供達の事を覚えてあげるために。




子供達の名前と子供達の夢を刻んだアルバムを。


高林は一人一人の写真を撮り
そして一人一人の夢を聞いていく。


その行動は職員室でも浮いていた。

そんな高林の行動をいぶかしがる教師達。

でも

そんな高林の行動に生徒達は応えてくれた。







数日後、高林はいつものように生徒の写真を撮り続けた。



「そこダメだよ。」

後ろで声をかけた生徒がいた。
初めて喋る言葉に高林は当たり前のように応えた。

何で、森君。


「そこ、逆光だから。僕ならあそこから撮る。」


それから?


それから森君はモデルがどう撮ったらキレイに映るのか
的確に指示をした。


高林は森君の写真を撮るのをお願いしていたが
森君はちょっと躊躇していた。



じゃったら森君、わしの写真を撮ってくれんか。


その申し出には森君は快く応え
先生を被写体にシャッターを押した


「もう一枚いい?」






今まで一度も私達に喋った事がなかった森君が
教育実習生と話している。

その光景が時任先生には衝撃だった。











「写真っていいよ。」


屋上で高林と森君は語り合う。

なら、将来の夢は写真家じゃな。

「先生、単純。
でも、僕卒業したらすぐ就職しないと
ちゃんとした会社に入って給料稼いで
おじさんとおばさんに養育費返さないと

簡単に夢を語れる程
僕の人生って簡単じゃないんだ。」












そして高林の最後の教育実習の日が来た。

最後の授業として
高林はもう一度、夢の話をした。


二週間前、わしはこの教室で
夢は人生の中で一番大切なものだと思っていると話した。

何故なら

夢は君らを強くする

夢は君らを励ます

夢は君らが迷った時、道を照らす星になってくれる。


わしの夢は野球選手になる事だった。

わしは甲子園を目指した。
しかし、甲子園には行けなかった。

わしは社会人野球に入った。
しかし、自分が入社したその年にその野球部が休部した。

だからわしは大学に入って大学野球から始めた。

そして大学野球で優勝して念願のプロ野球選手になれた。

夢を投げ出さんで本当によかったと思った。

でも、入団したその年に左肩脱臼の大怪我をしてしまい
たった4年で現役を引退してしまった。


思い出してくれ
夢は君らを強くする

夢は君らを励ます

夢は君らが迷った時、道を照らす星になってくれる。



色んな人の応援を受けて
わしは打撃コーチになった
選手を育てて選手の夢を実現する事が
わしの新しい夢になった

それから30年
我を忘れて夢を生き続けた。


この人生、残りわずかじゃ。

ここに君らの夢がある。
まだ若い夢。
出来たての夢。
形のないものだってかまわない。

君らの夢がわしらの宝じゃ。

これからわしは君らの夢を応援するで。

どこにおっても
何をしとっても
東京に戻っても
プロ野球のコーチに戻っても君らの夢を応援する。

いいか。
君らの夢を応援する人がこの世に最低一人でもおるって事を覚えていて欲しい

挫折したりくじけそうになった時には
その事を思い出して欲しいんじゃ。





高林の人生に裏打ちされたこの言葉は森和人の心を動かした。

そして、高林のアルバムに森和人の写真が飾られた。





そんな生徒の応えに高林は決心した。





その翌年の春、高林は59歳の新人教師として桜台高校に赴任した。



私はプロ野球という世界で野球一筋に生きてきましたが
昨年の教育実習で皆さんと出会い
挑戦者魂が再び沸き起こってまいりました。

夢を持ち、諦めずに突き進めば
夢は必ず達成できるものです。

私はここに骨を埋める覚悟でみなさんと一緒にやっていきます。
皆さんの将来の糸口を探す手助けをするために
命を懸けてバックアップしていきたいと思います―――。




これねぇ。録画したんだけど
録画して良かった(T▽T)


これは何度見ても泣けるわぁ(T▽T)


やっぱ実話っていうのがねぇ。


主人公が書き綴った言葉

主人公が語る言葉

そのひとつひとつに
彼が生きてきた重さが感じられるし

何より
自分の味方でいてくれるっていうのが
とても大切というか

とても嬉しい事ですね。

夢を知ってくれている人=本当の自分を分かってくれる人

みたいでね。


たしかに今は昔と違って
ある生徒に肩入れすると
他の生徒の保護者からひいきだと苦情の電話が入り
ちょっとした事で体罰だと騒がれる

難しいですよね。


それに学校の先生というのは
大学を卒業してからすぐに教員になる。
それでもって、どこか考え方が凝り固まってしまってる。

だからどうしても学業を優先させてしまったり
スポーツを優先させてしまったりと
学校の都合に走ってしまったりする事がある。



だからこの学校の校長は高林に託したんでしょうね。

コーチと教師は似ていると思いませんか
どちらも人を育てるお手伝いをする

あなたのコーチの経験が息詰まった教育現場に新しい風を
吹き込むかもしれない。


私はあなたの教育実習を受け入れた。


生徒と教師が生き生きとしてる学校を作る
それが私の夢です。

思うようにおやり下さい。


なかなかに言える言葉ではないですからね。



という事はうちの弟君も社会経験を通じて教師になったって
事で結構それが役に立ってるのかもしれませんね。



・・・自衛隊で3年務めて高校数学の教員ですけど(; ̄∀ ̄)ゞ



それとエンディングの歌もいいですね。

思わず録画したのを何度も聞いてまた泣いてました(T▽T)


なもんでその歌詞を書いてみた↓

ねぇもしも
ふと貴方が何かにつまづいた時

側にいて支えられる
柔らかな花になろう


長い坂道の途中

立ち止まる事もある


そんな時には背中を押す
追い風になる


あの花のように厳しい冬越え
やがて春に花咲かそう

あの風のように貴方を包んで
明日へ続く坂を越えよう







この歌詞が見事なまでに高林の生き様を物語っていますね。





彼が今後どうなっていくか分かっているだけに

私はここに骨を埋める覚悟でみなさんと一緒にやっていきます。
皆さんの将来の糸口を探す手助けをするために
命を懸けてバックアップしていきたいと思います。



この言葉が重く響きます。


また、この高林を演じる高橋克実さんがいいですねぇ。

たしかに彼は「世界の中心で愛をさけぶ」で
サクの父親を演じていた時も見せてくれましたからね。

ただ、
まさか高橋さんの台詞でこんなに泣けるとは思ってもみませんでした
(T▽T)


これはもう今期イチオシと言っても過言ではないですね。
というか、今期の中で一番心を揺さぶられる作品でした。


次回も見逃せません。

甲子園への遺言―伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯

この記事へのコメント

2008年01月20日 01:55
こんばんは。

もう、やられました(笑)
一応初回ということで、ちょっとチェックしとこうかな?って思った程度
だったので。。。まさか泣くとは思わなかった(苦笑)
森君が心を開いてきたあたりからウルウル。
夢を語る時のみんなの笑顔が素敵でしたよね~
実習最後の日の高林先生の話を聞きながら、自然と涙が出てきちゃった。
夢と一緒なら、どんなことでも頑張れそうな気がしてきた(笑)
私も、今期一番のドラマかもしれない。
最終回を思うだけでタオルが必要かもしれない。
あ~いいドラマだねぇ。。。
ikasama4
2008年01月20日 09:46
アンナ様
おはようございます。

こんなにも感動するとは思ってもみませんでした。

今まで誰にも話さなかった森君が
話し掛けてきたところから
もうダメでした(T▽T)

自分の夢を応援してくれる人がいてくれたなら
なんかそれだけで嬉しいしホント頑張れる気がしますね。

このドラマを見るにはもうタオルが必須です。

毎週、土曜は高橋克実さんを見るのが
楽しみになりました(笑)
2008年01月27日 00:00
いいドラマでした。
今、失職中のロートルの小生ですが、見事に壺に嵌まりました。
残念ながら録画していない。二回目は見たけど。
ブログで記事にしましたが、貴ブログ、とても参考になりました。
感動を新たにした気分です。
ikasama4
2008年01月27日 08:54
やいっち様
はじめまして。
私のような拙い文章で
参考になるとは恐縮です(;・∀・)ゞ

これは本当に感動します。
かつて彼と同じような人と接した
経験をした事がある人にとっても
そうでない人にとっても

学校とはどういう場所で
先生とはどういう職業なのか

人が生きるとはどういう事なのか

改めて考えさせてくれる作品です。

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