風林火山 第47話 「決戦前夜」

成田長泰が兵を引き揚げた。
その他の関東の武将も成田に習うかのように兵を引き揚げた。

これ以上、上杉軍は戦う事が出来なくなった。


それと同時に北条氏康は小田原城を守りきった。



そして、政虎の陣には
成田長泰の妻・伊勢が取り残された。



政虎は伊勢に言う。
そなたが夫は義を捨て味方を裏切り
このわしにもそなたにも無礼を働いた。

わしが戦をするは斯様な人間がおるためじゃ!



伊勢は毅然として言う。
お待ち下さい。
私をその御心のままに。



・・・そなたが夫の無礼の報いを受けると申すか


いいえ。
裏切りの報いならば受けましょう。
私はもとより人質にございます。

されど、無礼の報いと仰せならば
それを受ける言われはございませぬ。

我が夫の祖先は
源氏の大将・八幡太郎義家公に対しても馬上にて礼を交わした名門の家柄。
左様な事をご存じもなく武人の前で鞭打つとは
あまりに非道。無体なる振る舞い。
夫は貴方様を裏切ったのではなく見限ったのです。



伊勢の言葉、ひとつひとつが政虎の心に突き刺さる。


他の方々も皆同じでござりましょう。

私には夫の心中がわかりまする。

さぁお斬り下さい。

夫の名を守るため、お手討ちとなるのは覚悟の上。


神仏を篤く敬う貴方様が
かくも人の心に無知であったとはお笑い草としか申す他しませぬ。
神仏が人を手討ちになどなさりましょうや。
天罰等と言うても所詮は人の驕りに過ぎますまい。



かの者の言葉は正しい。


政虎は己の心にある驕りに気付いた。


神や仏は人の心に宿るもの。

かの者の言葉はわしへの戒めじゃ。

此度の罪はわしの罪。
わしが報いを受けねばならぬ。



その時、「武田が動いた」との報せが届く。

上杉が守る信濃・割ヶ嶽城を武田が落としたと言う。


政虎は引き揚げを決意した。


あくまでも敗戦による引き揚げではなく
これは武田を討たんがためとして。








相模から引き揚げた信玄は海津城に入った。



割ヶ嶽城は難なく落城した。

しかし、原美濃守は戦の折、高梨勢に追い討ちを受け負傷をしたと言う。
未だ生死は定かではない。

勘助の顔色が曇る。




その後、河原村伝兵衛は此度の城攻めの功により甲州金を三掬い与えられた。
伝兵衛はその褒美に大いに喜んだ。
そして遠目で夫の喜ぶ様を見ていた葉月も。


その時、馬場信春より
上杉勢が相模より引き揚げたとの報せが届く。


間もなくこの地に上杉が来る。



勘助はそう感じていた。






その日の夜、相模・小田原では上杉軍の脅威が去った事で祝いの席を開いていた。


「今宵はよろしいのでは。」

清水吉政が酒を勧めた。

普段より氏康が夜、酒を飲まない事を知っていたからであった。
しかし、かような時であっても氏康は飲まなかった。


此度の上杉方の退却は武田が信濃を攻撃したためであったらしい。

武田が囮となって敵を引き付けた事で安堵する清水。


左様に思うか。
武田が我らのために越後の敵になったかと思うか。


氏康は武田の意図を見抜いていた。


武田が長尾に勝ったとなれば
武田は更なる力を得る事になる。

そうなればいずれは駿河も相模も危うい。


いつまで経ってもよく焼けぬ貝じゃ。








同じ時、信濃・佐久の地で幸隆と忍芽が飲み交わしていた。


「川中島で戦を。」


最早謀略では越後に勝てまい。

「負ければお前様の御首も敵に取られるのですね。」

負けたような顔を致すな。
ここにくっついている間はそちの勝気な笑みを見ていたい。


「必ずや勝ちまする。」

思えば、この地に帰ってからというもの
いつでも戦に備えてばかりじゃの。


「いつまで続くのでしょうか」

御館様が勝ちを収めるまで。今はそう思うしかあるまい。


その時、妻の兄・河原隆正が屋敷を訪れた。


箕輪城の長野業政様が病により身罷られたと言う。


かって武田に追い落とされた我らをお救い下された長野様。
我らのために懸命になって動いてくれた長野様。


長野様は如何なる主君であろうと忠義を尽くした。

そんな長野様の生き方に惚れ
このわしも左様に生きる事を覚悟し、甲斐に入ったのじゃ。


その夜、幸隆の眼から止め処なく涙が溢れていた。







数日後、勘助の屋敷に香坂弾正が訪れた。


勘助の申し出。
それは勘助の娘・リツを嫁に貰って欲しいというものだった。


このわしから城取りの奥義を授かりたいと言うたの。

リツはわしの城じゃ。

すなわちリツを見ればわしの城が分かる。





香坂 → ( ゚д゚)ジー



「・・・わかりませぬ。」



わしの城も行く行くはそなたに守って欲しいのじゃ。

リツも若くはない。
また、この男とて若くはない。

これは縁じゃ。



勘助の言葉を遮るかのようにリツは言う。

「私がいけないのです。
本当は婿をとって山本家の跡取を生まなければならぬ身。

旦那様と二人で過ごしてきたいために。」

「何故に」

「生まれて初めてお慕いした殿方でござります故。」

そんなリツを勘助は窘める。

自分は紛れもなきリツの父であると。



しかし、そんなリツを香坂は気に入ったらしい。



「リツ殿、喜んで某、そなたを妻と致しとうござりまする。」

思わぬ申し出にリツはその場を後にした。


これは良い。事に良い。


勘助は喜んだ。

別段、山本家を継いでもらわなくても良かった。

リツを貰ってくれる事が大事だった。


「勝ちを収める事は難しい。」

かつて若かりし頃の勘助が語っていた。

それと同じような言葉を香坂弾正が口にしていた。

だからこそ。


そなたであれば申し分ない。



香坂は言う。
「人を慈しむ心、それこそが山本様の奥義と心得ます。」


二人に穏やかな空気が流れていた。


しかし、次なる香坂の言葉が空気を一変させる。




「越後勢はいつ現れましょう。」


先頃、戦をしたばかりじゃ。
兵馬を休め、この冬を越すやもしれぬ。



「・・・海津城にてお待ち申す。」


香坂弾正。

わしの全てをそなたに託す。死に急いではならぬぞ。



「貴方様も。」


香坂は自分の娘を己に託す勘助の覚悟を知った。
そしてまたリツも―――。









越後では政虎の姉・桃姫の次男・卯松に字を教えていた。

今まで刺々しい感じの政虎の雰囲気が変わった事に桃は気付いた。

「そなたは少し変わられたようですね。」

某が・・・変わった?


「如何に軍神と言えども怒りだけでは戦えまい。
そこに慈愛がなければ―――。

神仏を篤く信仰するよりも
誠の慈愛を持てば越後の皆々にとってそなたの心が滅ぶ事はあるまい。」


姉上の言われる通り。

我は人故。人を超えねばなりませぬ。

我、死すとも我が心がこの地を守っていけるよう
我は己を超えねばなりますまい。

それが守護としての覚悟にござりまする。









間もなく信濃への出陣が決まった。


矢崎家では平蔵の妻・ヒサが何も言わず夫の戦の準備を整える。

「ヒサ、十吾郎とミツを頼む。ヒサ、案ずるな。」

「死んだら二度とここへは帰れぬ。それだけは忘れてはならぬ。」

「わかっておる。」

平蔵の膝元にミツがいた。





越後の陣に士気高らかに武田を討つため諸将が集まった。


「関東出兵より2ヶ月も経たずの信濃への出兵。
武田が川中島に新たな拠点・海津城を築いたからじゃ!

我らに決戦を挑んでの事と見受けられる。
今こそ武田を討つ好機!」

「武田は一戦を挑んでまいろう。
我らは神命に誓ってこれを打ち破らん!」


運は天にあり
鎧は胸にあり
手柄は足にあり


死なんと戦えば生き
生きんと戦えば必ず死するものなり

運は一定にあらず
時の次第と思うは間違いなり

武士なればわれ進むべき道はこれ他なしと
自らに運を定めるべし


その決意をもって二心なき事
毘沙門道に向かって誓うは不用なり。


我こそが・・・我こそが毘沙門天也!

いざ、出陣じゃ!!


まもなくやって来る武田との決戦に士気は最高潮に達していく。




そして1561年8月


1万8千が川中島に向かって出陣した。


その報せは狼煙となって数時間のうちに甲斐に届けられた。


信玄は勘助に言う。

早かったの。





海津城が危ういか。


されど海津城は落ちませぬ。

己が頼みとする香坂弾正が守っている限り。



決戦は近い―――。





今回は「川中島」に決戦を前にして
今後、起きるであろう色々な展開が描かれていました。


川中島の合戦に関してはこちらがとても参考になります。
http://www.furin-kazan.jp/nagano/tatakai/zukai.php

よく伝え聞かれる話ではこれが正当でしょうね。

本当によく出来てます。

この中の過程を今後、このドラマで補完していく事になるのでしょうね。



それにしても終盤に出てきた政虎の衣装
「戦国無双」のキャラに出てきそうだな(; ̄∀ ̄)ゞ



今回のポイントは北条家。
武田が同盟を破棄して今川に侵攻すると
北条は武田を攻撃します。

すると北条は武田の敵となる上杉と同盟を結ぶ事になります。


北条家は戦国時代において
大国ながら代々跡目争いが起きなかった戦国大名です。

今川家では花倉の乱が起きたように
家督を巡って争いが起きています。

また、義元の父・氏親の代でも家督争いが起きています。



武田においても
信玄とその子・義信との間で争いが起き、
その中で義信は自害し、傅役であった飯富虎昌も自害しています。


上杉家においては
上杉謙信が急死するとその家督を巡って二人の男子が争います。


一人は今回出ていた桃姫の子・卯松君。
後に政虎の養子となる上杉景勝です。

そしてもう一人が北条氏康が子であり
上杉との同盟のために政虎の養子とした上杉景虎です。

二人の家督を巡る争いは後に御館の乱と呼ばれます。

これは再来年の大河ドラマで語られる事でしょう。


領国を運営していく中で
次なる者へ託す事は難しい事です。


ある者は血にこだわり
ある者は姓にこだわり

とあるようですが

勘助は己の意志を受け継ぐ者であれば良かったみたいですね。




それから伝兵衛&葉月

結構お似合いな感じになりました。


・・・早く結婚するのは損なのでしょうかね(; ̄∀ ̄)


ちょっと太吉の呟きに笑ってしまいました。



さて、話は変わりますが
公式HPで武田家の一団の異名がつけられていました。



青き月影 伝説の軍師 山本勘助
燃える日輪 甲斐の虎 武田信玄
武田譜代の気骨の老将 諸角虎定
赤備えの闘将     飯富虎定
勇猛ながら強運の武将 馬場信春
知略に優れた攻め弾正 真田幸隆
武田軍の副大将    武田信繁
武田家臣一の出世頭  香坂虎綱




勘助を「月影」と喩えたのはこのドラマで板垣が歌った
「月影」からきているのでしょうね。

また、勘助を「月」と喩えているのはこちらの記事↓

http://www.furin-kazan.jp/nagano/tatakai/jinbutsu.php#yamamoto




色々と異名を付けるもんですね。


で、今回は
こちらからこれから挙げる武将に関して
異名を募集したいと思います。


山本勘助
武田信玄
真田幸隆
馬場信春
香坂虎綱
飯富虎昌
諸角虎定
武田信繁

上杉政虎
宇佐美定満
村上義清
直江実綱
柿崎景家



「こういう異名がいい」って意見があらば
「この方のこの異名に賛成」でもいいです。

複数OKです。


例えばこんなのでも全然いいですよ。
















































各武将で異名が多かったものは自分のイラストにつけてみます。

こんな感じでね。






返信は出来ないかもしれませんが
ドシドシ応募をお待ちしております( ̄ー ̄)/~~

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この記事へのコメント

2007年11月26日 11:40
信玄=フグ、政虎=宇宙人…この二人は他に思いつきません…
勘助も…格好良いものは浮かびません。変な見方していたせいか、
「ドMな軍師」…だめですね…(泣)
>香坂 → ( ゚д゚)ジー
「・・・わかりませぬ。」
香坂クン、利口なだけではなく、ボケの才能もあると見ました。
リツと上手くやっていけそうです。
2007年11月26日 15:03
こんにちは~!

えー・・異名・・難しいですね~。

信玄・・甲斐の食えぬフグ
政虎・・毘沙門星雲の宇宙人

勘助・・由布姫命
真田・・真田郷より愛を込めて
香坂・・あの日の短パン小僧
    (すみません、めちゃめちゃですね><
      インスピレーションで書いてるもんで・・; ̄∀ ̄)

飯富・・ブルーな赤備え
諸角・・みんなのじっちゃん
武田信繁・・武田軍の優等生

宇佐美・・飄々とブラック
村上・・信濃の真正直

越後の重臣たちのイメージが今ひとつ分かりません・・。

直江・浪Come Back
   パパと娘の7日間戦争(浪さんのお父さんっていう印象しかなくて、すみません><)

馬場・・うーん・・・。

面白イラストで笑わせてもらった後の、正統派勘助がすっごく素敵に見えます~。

2007年11月27日 00:06
ikasama4さん、こんばんは♪
>北条家は戦国時代において
大国ながら代々跡目争いが起きなかった戦国大名です。

ですよね~よいですね~◎「北条百年物語」(正確には95年だけど)も大河ドラマ化しないでしょうかね?「炎立つ」みたいに。
しかし今回の「甲斐の河豚」と「越後の宇宙人」・・・ナイスですね!でも「駿河の蹴鞠」はもっと美形だと思います(←一応クレーム・笑)あと「相模の亀」ももっとカッコいいよ~(><)
あでも、この「勘助」すっごくカッコいいんで次回の「風林火山クラブ」のメインに是非是非募金をお願します◎
ikasama4
2007年11月29日 21:15
まいまい様
勘助=ドMな軍師
・・・確定でしょうかね(; ̄∀ ̄)

香坂は頭が切れますが
事、女性問題については天然ですね。
この辺りも勘助とソックリです(笑)
ikasama4
2007年11月29日 21:16
さくらこ様
こんばんはです。
たくさんの異名
ありがとうございます。

諸角の異名は個人的に気に入りました♪

正統派勘助はなかなかのお気に入りなんで
喜んでもらえて何よりです(^▽^)
ikasama4
2007年11月29日 21:16
なおみ様
こんばんはです。

北条家に関しては自分も是非大河ドラマで
やって欲しい一族のひとつです。

「炎立つ」のような感じにするならば
3部構成で

第1部が伊勢盛時(北条早雲)
第2部が北条氏康
第3部が北条氏直って感じになりますかね。

ただ基本的に大河ドラマって
原作がある程度、基盤になっていますからね。

北条早雲の小説は結構ありますが
それ以降の北条家がメインの小説って
正直聞いた事がないんですよヽ(;´Д`)ノ

なければ自分らでつくるしかないんでしょうかね(笑)


「蹴鞠」と「亀」については今後考えてみますね。

勘助、これでよろしければ是非どうぞ( ^▽^)
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