風林火山 第38話 「村上討伐」

武田・北条・今川の三家が同盟を結ぶ。
全ては来るべき戦に備えての事。


村上義清との決戦も迫る中、晴信の母・大井夫人が亡くなった。

大井夫人の葬儀で武田家家臣が一同に介する。


そこで晴信は軍議を開いた。


晴信は村上に和睦の書状を送った。
しかし、村上は無下に拒んだ。


これにより村上の討伐は是非もなき事と相成った。


ついてはその策をこの軍議で定めると言う。





怖れながら申し上げます。


飯富虎昌が進言する。


年内は御曹司様と婚儀があります。
村上を倒し、信濃を治めた後に婚儀を進めては如何でしょうや。

はっきりと申し上げれば
御館様は北条家との盟約もお考えではござりませぬか。

今川家がそれを知ってしまってはこの婚儀は祝い事になりましょうや。

ならば村上攻めの後に我らが強国となった上で婚儀を勧めては如何でしょうや。



村上攻めの前でなければなりませぬ。
御館様は村上領へのご出陣は婚儀を待って行うのが得策にござりまする。



勘助は言う。


武田と北条が同盟を結ぶと同時に
今川と北条にも同盟を結んでもらう。

そうなれば今川と北条との確執もありますまい。


また今川家から御息女を迎える事により
武田の背後には強国・今川家がつく事になりまする。

そうなれば
村上領の地侍は武田になびく事は必定。




虎昌に異論を挟む余地は全くなかった。




次は馬場信春が進言する。



此度もまた調略のみで戦をするのか。

彼が恐れていたのは武田軍の士気であった。

調略により信濃衆の者達は次々に加増となる。
しかし、武田家譜代の者には満足な加増はない。

また、調略ばかりの戦で
血を流す戦が出来なくなる武士達が増えてくるのでは。

そうしてただ生き長らえる事のみを忠義と考えておる者が出てくるのではないか。


その進言が受け入れられたか
村上領である安曇郡の小岩岳城は馬場信春が先陣となって攻め立てた。

そして城は落ちた。



それから武田に二人の武将が誕生した。


飯富虎昌の弟・源四郎昌景

後に山県の姓を名乗り、兄と同じく赤備えを率いた名将である。

春日源五郎虎綱

後に香坂の姓を名乗り、「逃げ弾正」の異名を持つ名将である。




それから間もなく嫡男・義信と今川義元の御息女との婚儀を迎えた。



その光景を父も母も温かく見つめていた。





ただ一人、飯富虎昌は未だに疑念が晴れずにいた。


婚儀を結ぶ以上
最早、今川家と敵対するは断じてあるまじき事。
武田家を継ぐ者は太郎様をおいて他になき者ぞ。



心得ておりまする。



とりあえず飯富は勘助に釘を刺した。


自分の推論を裏打ちする根拠がない以上、飯富にはこれが限界だった。









その夜、武田家の嫡男の御婚儀で家来達も酒を飲んで浮かれていた。

太吉も伝兵衛も酒を飲んで浮かれてる。
しかし、勘助は酒なぞ飲んでいる場合ではなかった。


そこに一人の女性が現れた。


原美濃守の娘・リツ。


彼女は既に太吉の妻と仲良くなっていた。



将を射んと欲すればまず馬を射よ



リツはこの言葉を見事に実践しているらしい。



勘助の器にリツは酒を注ぐ。



おまえ達、歌でも歌いなされ。


リツの言われるがままに歌う伝兵衛と太吉と太吉の嫡男。


リツは既に家臣をも手懐けてしまっている。
真田殿に匹敵する程の恐るべき調略能力である。



何故、ここに。



わかりませぬか。
勘助殿をお慕い申しておるからです。





そのリツの言葉に歌が止まる。
そして伝兵衛達はそそくさとその場を去っていく。



父上は承知しておりまする。
山本家はこのまま絶えても良いですか。




からかいはお止め願いたい。


勘助は黙々と酒を飲んだ。


そんな無愛想な勘助をリツは笑顔でただただジッと見つめていた―――。





それから武田は相木と真田の調略により
村上領の地侍は次々と武田に寝返った。



そうして村上義清の居城は孤立していった。


かくして村上討伐の舞台は整った。




その軍議を終えた後、春日虎綱が勘助に意見を述べた。



村上を越後に逃がすのが上策と考えますが如何に。

流石、御館様が目をかけた人物だと勘助は眼前の若者に関心した。



如何にも。敵は村上にあらず。

村上は逃がすが得策。


村上を討つにしろ逃がすにしろ村上領を奪えば
長尾景虎は必ずや信濃に出陣し参りましょう。

村上を討てば
景虎は攻め取った領地を治める事になりましょう。


しかし、
村上を生かしておけば
景虎はその領地を村上に返すのみに働きましょう。


景虎は村上の援軍に過ぎませぬ。

景虎はそのような大義を重んじる男にござりまする。







その進言をもって
晴信は村上の居城を取り囲む飯富の軍のみを退かせた。



その日、村上義清は城に火を放ち、越後へ落ち延びた。


越後へ向かう経路は川を渡らなければならなかった。


ひとつは浅瀬を通るルート
もうひとつは深い場所を船でもって通るルート



義清はおそらく敵が待ち構えているであろう浅瀬を通り
自分の奥方らは敵がいないであろうと考えた深い場所を通る事となった。




一方、馬場信春は
村上軍は敢えて深い場所を通り抜けるであろうと対岸に待ち構えていた。





これが新たな悲劇を生む事となった。



次々と村上方の女達が自害していく。


そして最後の一人が自害しようとする。


馬場はその女性が自害しないように食い止めた。

その女の顔には見覚えがあった。


あの時の矢崎の娘だった。

その女子の胎には子がおるらしい。

―――あの平蔵の子か。
そうなのか。



その女子は何も応えない。


よかったのう。
行け。女子は斬らん。
さぁ行くのじゃ。



その女子は馬場に唾を吐きかけて、その場を後にした。



敵方の女子の死は馬場の身体を射抜いた。

そして思う。

女子もまた心に鎧をまとって戦っているのだと。





越後へ逃げ延びた義清を長尾景虎は温かく迎え入れた。






そして柿崎、大熊両名の援軍により
すぐさま信濃に出兵する事となった。


越後の兵を援軍にした村上の猛攻は激しく
かつての旧領を一気に回復し、武田は甲斐に引き揚げた。



しかし、7月に晴信は大軍を率いて村上攻めに向かった。
その勢いは凄まじく1日で十以上もの城が落とされた。

村上の反撃はわずか三ヶ月で終わり、
義清は再び越後に落ち延びていった。




勘助は晴信に進言する。


これであの男が出陣して参りましょう。

信濃に越後の毘沙門天が現れましょうぞ。


これより長きに渡る川中島の戦いが始まっていく―――。






いやぁ今回もなかなかでしたねぇ。







太郎様 傅役(正式)





四郎様 傅役(自称)



この二人の対立もなかなかでした。

ただ確たる根拠がないから飯富もこれ以上突き詰める事は出来ませんがね。



相変わらず憲政は遊興癖が出て遊び呆けていました。

で、相変わらず「北条を討て」です。

馬鹿のひとつ覚えのように同じ事しか言えない関東管領様です(苦笑)



それにしても景虎が登場するだけで
何かそれまでの空気が変わってしまうとこがあります。

バックに流れる琵琶の音もあるでしょうが
それ以上に景虎を演じるGacktさんの妖しさがそうさせるのかもしれません。



そうそう、長尾景虎は上洛しているんですね。
そして時の天皇と将軍に拝謁しているんですねぇ。

ホントに律儀過ぎる程の律儀さです。



その間に国に異変が起こるなんて全く考えてないんでしょうね(笑)






さて、今回原虎胤の娘・リツが出てきましたが原虎胤は出てきませんでした。

今回はそんな原虎胤について幾つか。






原虎胤は猛将として有名ですが彼は武田家譜代の家臣というのではなくて
元々は下総国の千葉家の家臣である原氏の一族でした。
しかし、彼らの城を時の古河公方に攻め落とされ
虎胤は父と共に甲斐へ落ち延びて信虎に仕えます。

そうして武田家で活躍した虎胤ですが
1553年に武田家をなんと出奔します。


原因は宗教問題です。


甲斐ではある時期
浄土宗と日蓮宗による宗教問題が起きたらしいのですが
この論争に虎胤が加わったそうです。

これが甲州法度に抵触したらしいです。


で、出奔した虎胤はなんと北条氏に仕官します(笑)



でも1年くらい(資料によっては4年とも)で
また再び武田家に仕えるらしいんですけどね。


なもんで、今の原家は
当主不在なのかもしれません(苦笑)


だからリツはあのまんま
勘助の家に居座るのかもしれません(笑)


ちなみに原虎胤は「鬼美濃」の異名がありますが
これは後に馬場信春に受け継がれます。





それから憲政の遊興癖は相変わらずでしたねぇ。
あの女子達に風魔が混じっていたらサイコーです(笑)

まぁこの地であれば軒猿かもしれませんけど。


それと馬場信春が言った
「武田家譜代の家臣がないがしろにされてしまう」

これを馬場信春が言ったってのがまた面白いとこです。

武田勝頼の時代になると
勝頼は譜代の家臣の言葉を聞き入れなくなり
長篠の戦いでは山県昌景や馬場信春が退却を進言するものの
強行に織田・徳川連合軍と戦う事を決断したというのが
結構色んな作品で書かれています。

そしてこの戦で山県も馬場も散っていきます。


この馬場の言葉はそんな未来を予期したようなものかもしれないとこが
なかなかに面白いとこです。





そして今回、ポイントになるのは
馬場信春と諸角虎定とのやり取りですね。



調略による戦によって無駄に血を流さずにすむ事はいい事である。

でも、それによって武田家の武士達が磨いてきた牙が
使い物にならなくなるかもしれない。

そうなれば、ただ生き長らえていく事が忠義であると考える者が出てくるかもしれない。


馬場はこれからの事として言ったつもりでしょうが
年齢としては自分よりも若い甘利や板垣が戦死していった事を恥じる諸角としては
その馬場の言葉は諸角の誇りを傷つけてしまったようです。



次回、おそらく諸角が第一次川中島の戦いの鍵となるようです。

どうなっていくのか楽しみな限りです。

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この記事へのコメント

2007年09月24日 22:38
ikasama4さん、こんばんは。
>それから憲政の遊興癖は相変わらずでしたねぇ。
あの女子達に風魔が混じっていたらサイコーです(笑)

そうそうそう!(笑)バカのひとつ覚えみたいに「氏康を成敗しろ」とか言ってる間に「風魔」にグッサリやられちゃう・・・ってのもアリですかね(笑)

>自分よりも若い甘利や板垣が戦死していった事を恥じる諸角としては
その馬場の言葉は諸角の誇りを傷つけてしまったようです

全く馬場のやつ(馬鹿?)余計なことを・・・お爺ちゃん可哀想じゃないですかね?あれでも「フグ」を一生懸命支えている信繁の「じいや」なんですからね。馬場は穴でも掘ってりゃいいんですよ。
ikasama4
2007年09月25日 00:21
なおみ様
こんばんはです。

>そうそうそう!(笑)バカのひとつ覚えみたいに「氏康を成敗しろ」とか言ってる間に「風魔」にグッサリやられちゃう・・・ってのもアリですかね(笑)
まぁたしかにあのバカ殿であればそれもありですね。
でも、彼は上杉家の家督争いに巻き込まれて
殺害されてしまう結末がありますからね。

まぁ馬場は馬場なりに思うところがあるのですが
まさか、その言葉で諸角の誇りを傷つけるとは
思ってなかったようですね。

諸角もまた武人という事ですね。

>馬場は穴でも掘ってりゃいいんですよ。
座布団一枚(笑)

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