風林火山 第31話 「裏切りの城」

武田晴信は小笠原攻めを行った。
周辺の武将は皆武田に降伏し
小笠原長時は間もなく逃亡した。

こうして武田は戦わずして信濃を手に入れた。



そして駒井より
六月二日、晴信の姉であり
今川義元の妻である
お北の方が亡くなったとの連絡を受けた。

容赦のない戦国の嵐が勘助を待ち構えていた。






七月十九日

武田は深志城に入った。
馬場信春を深志城城代に命じた。

勘助は御館様に進言する。

この地を信濃の拠点と致しましょう。
さすればその兵糧のこの地で一手に賄う事が出来まする。



晴信を始め、家臣達も異論はなかった。


信濃に立ちはだかる敵は村上のみ。

まだ木曽がいる。

そう言う駒井に馬場は今まで動いてこない故に心配は無用と言う。


もうすぐ信濃を手中に治める事が出来る。

こんなに早く信濃を手に入れるとは。
本当に長い道のりでございました。

思わず「どっちだ」と信繁が諸角に言う。



武田家家臣に笑いが起こる。



笑いが収まった後、晴信は言う。

信濃の先には越後がある。

そこにいるのは長尾景虎。

いずれ信濃に攻め入るは必定。

彼は兄より越後国主の座を奪ったと言う。

欲深き事は明白にござりまする。


その存念をしっかりと見極めねば。
のぅ勘助。


勘助は頷いた。


それと晴信の姉が亡くなった今、
駿河との繋がりはどう対処するか
晴信はまだ答えを見出せずにいた。



そして真田幸隆より
小笠原長時は村上義清の下に逃げたとの報告を受けた。



いよいよ武田と村上との対決が迫っていく。

その手始めとして
武田が落とさなければならない城。

それは砥石城。




勘助は真田の居城・松尾城に立ち寄った。

松尾城からは村上の支城・砥石城が見える位置にあった。

そこには相木殿もいた。


勘助は此度の戦で鉄砲を使う事を思案していた。


「すぐには使えぬぞ。」

すぐには使いませぬ。


砥石城攻めには時間がかかりまする故。



勘助は砥石城攻めに対する策を思案していた。

そこに幸隆の妻・忍芽がやってきて勘助に礼を言った。


先日、真田は御館様に呼ばれ次なる約束を交わした。


此度の本意を遂げれば
真田の里一円を真田殿に治めさせると。

その本意とは―――砥石城を落とす事。


その事に相木殿も我が事のように喜んだ。

それは祝着。
かならず本意を遂げましょうぞ。


あと少しで手に届く。

されど逸りまするな。

村上との戦は十分に機を待たねばなりませぬ。



勘助は真田に村上との戦に焦らぬように念押しして甲斐へ向かった。






甲斐に戻った晴信を三条夫人と子供達が出迎えてくれた。


晴信は自分の娘を見つめていた。

三条夫人はその夫の意図を瞬時に悟っていた。


御館様は娘の梅を今川家に嫁がすつもりだ。
梅はまだ八歳なのに。


されど心得てもらわなければならぬ。


萩乃は諏訪の四郎様をお預けなされてはいかがかと提案する。


晴信はその意見を退けた。

四郎は諏訪家を継ぐ者。
今川家は武田家との誼を求めている。良いな。


「今の言葉、喜んでよいのやら。嘆いてよいのやら。」

萩乃の言葉に三条は己の心情を吐露した。

娘を産んだ時から覚悟をせねばなるまい。
子を慈しむ心だけは覚悟をしてもままならぬ。







その頃、小山田信有は美瑠姫と共に自宅にいた。


我が小山田家は代々武田家に仕えてきた訳ではない。
時に和を結び時には争ってきた。


「また武田と争う事もありまするか。」

ないとは言えぬ。

戦って欲しいか。

「いいえ。武田を恨む気持ちはあなた様のお慈悲に抱かれて溶け去りました。」

そなたがわしを抱いたのじゃ。



藤王丸が駆け寄ってきた。
その子の姿に信有は不安を覚えていた。








勘助は久しぶりに自宅に戻った。
太吉の子供達もどんどんたくましくなっていた。


父のためなら死ねぬが旦那様のためならば死ねるわ。

そんな事を言う太吉の息子達の成長に勘助は目を細めていた。




そして根来より伝兵衛が帰ってきた。
二挺の鉄砲と鉄砲の技能を携えて。



そして勘助は御館様に面会した。

これより鉄砲商人として越後に向かう。

元より売りつける気はございませぬ。


そこまで上手くはいくかのう。

それに今川との誼はいかがするべきか―――。


今すぐ大事には至りますまい。


時を稼いで如何にするのじゃ。


その間に村上を攻めて信濃を治めてしまえば
今川家と誼を結ぶ事もございませぬ。


そのためには砥石城を―――。


急いてはなりませぬ。
そのためにも越後の動きが気になりまする。


御館様にも村上攻めに釘を刺した上で
勘助は越後に向かっていった。





その夜、葉月が真田の下を訪れた。


村上の間者を突き止めたとの事。

「重臣の一味か。」

はい。

相木は言う。
「その間者は使えるぞ。
我らのみであの城に篭る兵を減らしてはどうだ。」


「敵は攻めるよりも攻めさせる方が討ち取りやすい、か。」


「流石に話が早い。

村上の兵力を割けば一挙に砥石城を叩けるやもしれぬ。」


忍芽は勘助が言った言葉より村上攻めは慎重になるようにと
夫を押しとどめようとする。

奥方、砥石城攻めは真田殿こそが軍師にござりまする。

今、村上義清は高梨と交戦中である。

この機を見逃す手はない。



真田に抗う術はなかった。











翌日、真田は家臣を広間に集めた。

この城に裏切り者がおる。



その裏切り者とは、春原若狭守であると。

そして弟・春原惣左衛門に兄を斬るように命じた。

泣く泣く弟が振り下ろした刃を真田幸隆は止めた。


そして真田は弟の忠誠を試した。


そして春原若狭守は牢に入れられた。







間もなく信濃・葛尾城に春原惣左衛門が駆け込んだ。

たいした証拠もなく兄が疑われ牢に入れられた。
あのような狼藉には耐えられないと言う。


自分に兵をお預け下されば
真田の城を落とし、兄を救う事が出来ると。


かつて真田の下にいた平蔵はその言葉を疑った。
あの真田様は確証もなしに人を疑うはずがないと。


惣左衛門は言う。
今の真田は違いまする。


武田より村上の城を落とせば旧領を回復させるとの欲に惹かれ
真田はすっかり変わってしまったと。


須田はこの事は真田の謀ではないと考えていた。


村上の前に常田隆永が現れた。


「先刻の話、春原殿の申し出に間違いござりません。」

そう言った常田の隣にいた男は真田家臣の深井だった。





深井こそが村上の間者だった。




全ては真田が仕組んだ策略だった。

真田は葉月の報告により深井が村上の間者だと知っていた。
その上で今回の事件を起こし、葛尾城に向かった
春原の信頼を深井の手で得る事にしたのだ。


常田隆永は真田幸隆の弟だったが村上側についていた。
幸隆は常田と縁がある深井を通じて常田を寝返らそうとしていた。
しかし、それが仇となってしまったらしい。


春原がやる事はただ一つ。


真田の城に村上の兵をおびき寄せる。





その夜、須田は矢崎十吾郎を呼んだ。

真田の城攻めに須田の名代として参れと。
わしからの祝儀だと。




須田の申し出に矢崎は喜んだ。


「平蔵、喜べ。矢崎殿を名代にしてくれた。」


「敵の策略であれば生きて戻れるかどうか。」


「この地ではまだまだ余所者。
ここで武功を立てればこの地を我が里と呼ぶ事が出来る。

いずれ生まれ来る孫が継げる家を築く事が
このわしの役目じゃ。

早う孫の顔が見たいもんじゃ。
それまでは死ねん。
いや、死なん。」


「父上、御武運を。」






早朝、矢崎と小島と兵五百は松尾城に攻め込んだ。
しかし、敵兵の姿が見当たらない。




「放て。」
真田の掛け声と共に矢崎達の軍に向けて一斉に矢が射掛けられた。




真田の攻めにより村上軍は殲滅。


小島は戦死。


そして矢崎も。


その時、彼が最後に見たものは祝言を挙げた娘と息子の姿―――。



勝鬨を挙げる真田。



その声の発する方向に
平蔵は悲しみと憎しみが混濁していた。

















その頃、まだ何も知らない勘助は越後・春日山城にいた。

根来寺の僧として。



「そなた、誠に根来寺の僧か。
その髪、その風貌。
それで仏門に仕えていると言うのか。」




「気に食わぬ。」



「何挺用意できる。」


十挺ならば―――。


「百挺じゃ。
百挺用意致せ。
百挺届けさせるまでそなたは人質じゃ。」


「よいな。」


勘助はその言葉に何かしらの思惑が浮かんでいた。









今回よりスタッフロールで
「平蔵」が「矢崎平蔵」になっていたのがいいですねぇ。






さてさて現状の信濃の図はこんな感じ。







駒井も言ってましたが
信濃には村上以外に木曽氏がいました。

まぁあまり敵対関係を明確にしてなかったためか
武田も動く事はなかったみたいです。

武田の当面の敵は村上義清。


彼さえ倒せばもう信濃統一は済んだも同然だったようですね。



そのために砥石城を落とす事が重要視されていました。


この城さえ落としてしまえば
今後の村上攻めが容易になり、尚且つ村上は孤立してしまうためで
この砥石城は武田の戦略上、とても大事な戦だったようです。




ただ砥石城はとても堅固な城だったようです。

勘助が砥石城攻めに躊躇したのもなんとなく分かる気がします。





さて、今回のもう一人の主人公はやはりこのお方。




正直、この兜が描きたかっただけなんですけどね(; ̄∀ ̄)ゞ


真田幸隆は弾正忠の官位があったので
真田弾正とも呼ばれていました。

ちなみに幸隆という名前は晩年に名乗ったもので
この時代、「真田幸綱」と名乗っていたようです。

彼は戦上手であったので「攻め弾正」なる異名がありました。
ちなみに真田と聞くと「赤備え」というのを思い浮かべる方も
おられるかと思いますが、真田の赤備えが有名になったのは
大坂の陣で活躍した幸隆の孫である真田信繁(幸村)からです。




この時、赤備えで有名なのは
武田家重臣である飯富虎昌ですからね。






さて、その真田は御館様より
砥石城を落とせばかつての旧領を治める事が出来る確約を得ます。

もう少しで旧領が元に戻る。

その喜びに打ち震える真田幸隆。

そのために様々な手段を講じていきます。


そして砥石城の将兵を見事減らす事に成功しますが
その影で泣く者達もいました。


孫の顔が見たい。


そんな男の願いも戦はかくも無残に打ち砕いていきます。

それでも男は戦わなければならなかった。

自分の帰る里を築くために。





また晴信の姉が亡くなった事で今川家との間で
誼を結ぶ必要が出てきます。

晴信は自分の娘を今川家に嫁がす事を思案してるようです。


それが武田家のためになるから。


幸せを得るために誰かが犠牲となっていく。


それが戦国時代というものなのでしょう。

まぁ今もたいして変わらないかもしれませんがね。




それと村上の配下ながらどうも須田の動きが怪しいですね。
なんか事の次第を知っていたのではないかという気がします。

それと彼は元々矢崎の娘・ヒサを自分の側室にしようとしていましたからね。
平蔵に対する風当たりもちょっとキツイですねぇ。

結構小さい男です(笑)



そして小山田は久しぶりに我が家に帰ってきたようですが
美瑠姫が生んだ子供を見て顔色が変わります。

その子の姿を見て自分の子ではないと感じたような気がします。

ここもまた今後の伏線になりそうです。



さて次回は越後が舞台。

勘助と景虎、そして宇佐美定満と役者が揃ってきました。

さぁてどんな風になります事やら(;・∀・)ワクワク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2007年08月06日 00:20
こんばんは~♪
真田の策略成功の裏で、矢崎が悲しいことに・・・
須田はiksama4さんの仰るように、なんだか胡散臭いですよね~
次週は越後が舞台ですね♪
2007年08月06日 20:26
真田さんのイラスト、意気込んでますね~。
真田の郷を取り戻すためには、他の誰かが悲しむということも避けて通れないことですね。

どちらにも縁のあった平蔵にはとても辛い戦だったと思います。

小山田が子の姿を見た時の驚きよう。
そういうことなんだろうな、とは想像が出来たのですが、そこまで驚くような要素が、あまり画面上からは伝わってこなかったんですが・・・。

ダンカンさんにそっくりだった・・ってことですよね~・・・。

ikasama4
2007年08月06日 22:32
小雪様
こんばんはです。
戦に勝利して喜ぶ人の影で
戦に敗れ泣き悲しみ憎しみを募らせる方もいます。

そう考えるとちょっと悲しくなりますね。
ikasama4
2007年08月06日 22:33
さくらこ様
>真田さんのイラスト、意気込んでますね~。
ええ、ちょっと意気込んでみました(;・∀・)ゞ

>どちらにも縁のあった平蔵にはとても辛い戦だったと思います。
たしかに。
真田様があるから今の平蔵があると言っても過言ではないですからね。
分かり易く生きたいと願う思いとは裏腹に
事態は複雑になっていくようです。

>小山田が子の姿を見た時の驚きよう。
まぁそういう事なんでしょうねぇ。
まぁ小山田の顔は面長の切れ長の目が特徴である事に対して
藤王丸はまん丸お顔のまん丸おメメでしたからね。
ダンカンさんに似てるかどうかまでは
正直わからんかったです(;・∀・)ゞ

インパクトとしてはあまり分からないとこがありましたが
この辺りは今後の伏線として徐々に明かされていくのでしょうね。
2019年05月09日 14:12
What's up Dear, are you actually visiting this web page daily, if so then you will
without doubt get fastidious knowledge.
2019年05月12日 09:01
hi!,I really like your writing very much!
proportion we communicate extra about your article
on AOL? I require a specialist in this space to unravel my
problem. Maybe that's you! Looking ahead to peer you.
2019年05月30日 19:29
I every time used to study article in news papers but now as I am a user of web so from now I am
using net for articles or reviews, thanks to web.
2019年06月06日 13:22
Hi there, after reading this awesome piece of writing i am as
well happy to share my know-how here with mates.

この記事へのトラックバック

  • 「風林火山」第31回「裏切りの城」

    Excerpt: 小笠原が逃げ出し(笑)、信濃府中を手に入れた晴信。 馬場が城代となった深志城は、信濃北方に進出する拠点となるようです。 残る村上を倒すために砥石城を攻略せねばならず、村上を倒したあかつきには真田の.. Weblog: つれづれ さくら日和 racked: 2007-08-06 20:03
  • [大河ドラマ]風林火山 - 「裏切りの城」

    Excerpt: 2007大河ドラマ「風林火山」 - livedoor Blog 共通テーマ 今回は諸角爺やが見事クレジットのトリを務めています先週は越後にウェイトがあった回でしたが今週から武田の信濃攻略が本格化ですO.. Weblog: Hiro's - Blog racked: 2007-08-06 23:10
  • 一言でいいから話したい・・・。(舘ひろしのような新垣結衣)VS問答無用じゃっ。(佐々木蔵之介)

    Excerpt: 久しぶりにのんびりしていたら暗号名「お饅頭」くんから呼び出しがかかってしまった。 Weblog: キッドのブログinココログ racked: 2007-08-07 02:09
  • 風林火山 31話

    Excerpt: 小笠原長時を破り残すは村上義清との戦い。しかしながら勘助は砥石城へは攻めずに長期戦を望み、流行る真田幸隆を戒めます。そして鉄砲売りに扮して越後へ。 Weblog: 一期一会の彩りを求めて・・・ racked: 2007-08-08 22:52