新マチベン~オトナの出番~ 最終話

私はとりかえしのつかない失敗をしました。



校舎からの転落によって校長先生は亡くなった。
現在、自殺・事故両面で捜査が行われている。



校長の葬儀にマスコミは押しかける。
そんな彼らに徳永は遺族の気持ちを分かっていないと憤るが
堺田はマスコミを軽くあしらった。


「まともに相手をしてはいけませんよ。」


最後を締めくくりたいんです。
この事件が私の38年間の教師生活を問うている。
そう思っています。

徳永はあの時の校長の言葉を思い出す。



何故彼は亡くなったのだろうか。

誤って落ちたのか。
それとも誰かに・・・・・



その最中、新庄先生は警察に連行されていく。



学校の電話記録から刑事達は新庄が校長の死に関与してるのではないかと考えていた。


校長の爪に第三者と思われる皮膚が発見されていた。

そして新庄の腕には爪跡が刻み込まれていた。



「刑事さんの想像通りです」





新庄は校長の殺人容疑で逮捕された。




事態の把握のためにレグラン法律事務所は動き出す。



堺田と岡村は学校周辺の聞き込みに当たった。

そして徳永は新庄と面会した。
彼は新庄の弁護をする事に決めていた。


徳永には信じられなかった。


あの時、校長に泣きすがった新庄が
あれほどまでに校長を信じていた新庄が
校長を殺すとは徳永には思えなかった。



新庄は自分の過去を語った。


かつて新庄も学生時代はグレていた。
そんな自分を信じてくれた人がいた。

それが自分の担任だった当時の校長だった。


とにかく信じてるからって言ってくれた。

だから私はやり直せた。


そして彼女は夜間学校に行って担任の資格もとった。
でも、彼女はどこの学校でも雇ってくれなかった。

自分の昔の過去が邪魔をしてきた。


そんな自分を雇ってくれた学校がいた。

それが今の学校の校長だった。


それなのに。
あんなに信じると言ってくれたのに。

校長は私を辞めさせると言った。


それが私には許せなかった。

だから・・・



徳永は新庄の言葉に違和感を覚えていた。




堺田から連絡を受けて
徳永が事務所に戻ると新庄のクラスの生徒が二人いた。



爆破予告のメールを出したのはこの二人だった。




三ヶ月前、放火事件を起こした杉山を新庄は庇った。
二人にはそれが納得いかなかった。

あいつは悪い事をしたのに。

杉山が悪いんだ。
あいつが悪いんだ。


「自分に関係なかったらそれでいいのか!」


持論を展開する二人に徳永は一喝した。


二人の生徒は自分がしてしまった事が
引き起こした事態の大きさにただうな垂れていた。






「誰かを庇っている?」


それが新庄に面会して徳永が感じた印象だった。

あの時、私が警察を呼ぼうとした時
彼女は待ってくれと言いました。

その時は動転しているのかと思ったのですが
誰かを逃がすためと考えれば説明がつきます。


その相手とは―――聞くのは愚かか。


確証はないんですが。



堺田も岡村も事件について疑問を感じていた。

ひとつは女性があの窓から一人で男性を突き落とす事が出来るのかという事。

もうひとつは何故先生があの教室にいたのか。
二人が話をするのであれば職員室か校長室のはず。


事件の真相の全ては新庄と杉山が握っている。




その後、インターネットの爆破予告の犯人は別の生徒であるとの報道がなされた。


徳永は杉山の下を訪ねた。




「新庄先生は刑事裁判を受ける事になる。
君は新庄先生が殺人犯として裁かれる事をどう思っている。」


疑ってるんだろ。そう言えよ。

俺だよ。校長を殺したのは。



「何があったんだ。」




あれは事故だった。
あの時、動転して屋上に上がった。


俺を追いかけてきた新庄先生は言った。


「警察、行こう。先生も一緒に行くから。」

ヤダ。なんで俺が警察に行くんだ。
先生が俺の事、信じなかったからこんな事になったんだよ。

「先生、杉山の事を信じてるから。」

じゃあ警察には言うな。
言ったら俺も死ぬから。







「言いません。
私、警察には言いません。
ですからその事は言わないで下さい。」


真相を知った徳永に対して新庄はこう言い放った。


「彼を庇い続けるのですか。
彼のためになると思ってるんですか。

彼は永遠に罪を償う機会を失います。」


「罪を償うってどういう事?

私が「杉山をやりました」って言えば
私はまた杉山を裏切ったって思うんじゃない。

それって罪を償う事?

私は杉山が死ぬって言ったからここにいるんじゃないの。
杉山がここに来る日をここで待ってるの。」


「先生は起訴されるんですよ。
そうなったら杉山君はもっと苦しみます。」

私は決めたの。
今度こそあいつを信じるって。






依頼人である新庄から「黙っている」という。
事件の真相がわかっていながら
その事をクチに出す事ができない。

それは依頼人の利益に反する事だから。


どうすればいいのか。
徳永、堺田、岡村が三人寄って考えているものの
これといって打開できるような方法が見つからない。


寄り添うしか手がないのでは。
そう考える堺田に徳永は断言する。



「こんな事は絶対にあってはならない。」




徳永は再び杉山の下を訪れた。
そして彼の部屋の前で彼が話してくれる事を待ち続けた。



しかし、この行為は60を過ぎた徳永には少々きつかったようだ。




徳永は突然発作に苦しみ倒れた。



杉山からの連絡により徳永は病院に運ばれた。
軽い心筋梗塞のようだった。



その夜、徳永は娘に電話をした。


「この事件を降りようと思ってる

依頼人の気持ちが分からないんだ」


娘はこう吐き捨てて電話を切った。


分かるはず、ないじゃない。
母さんや私の気持ちも分からなかった人が
依頼人の気持ちなんて分かるはずないじゃない。

何のために弁護士になったのよ。



暗い病室に静寂がつきまとう。


どうすればいいのだろう。


そう考えているうちに病室に太陽の光が差し込む。

朝が来た。


その光に徳永は何かが開かれる感じがした。






その日、新庄は殺人容疑で起訴された。



徳永は新庄と面会した。
「私は法廷で無罪である事を主張します。」



「私は何も言いません。」


「これは杉山君のタオルです。
雨で濡れた私を気遣って貸してくれたものです。

彼は罪を逃れて喜んでいる人間ではない。

先生、どうか彼の背中を押してやってくれませんか。


ご承知のように
私はかつて報道する側の人間にいました。

自分達は真実を報道しているんだ。
何が悪い。えらそうな事を言っていました。


新聞やテレビで報道されている事は
事実のほんの一部だという事を知りました。

私が出来る事は先生に真実を語ってもらう事
それで杉山を救う事

それしかないと思っています。

私は諦めません。」













1ヵ月後
新庄への被告人質問が行われる事となった。



そこで徳永は新庄に校長先生との関係を訊ねた。



「校長先生は高校時代の恩師です。

私はいわゆる不良でしたが
先生はいつも諦めずに指導してくれました。

私は何度も警察にお世話になりましたが
いつも引き取りに来てくれました。」

「かつて不良だったあなたが教師になったのは何故ですか。」

「私自身が先生に助けられたかったので私もまた誰かを救いたかった。」


「なのに彼を殺した。」

「はい」

「警察では叱責されてカッとなって殺した」

「はい」

「校長には普段から不満を持っていたのですか。

これまでの話を聞く限りではそうは考えられません。

あなたは誰かを庇っているんじゃないですか。
もし、それが事実なら有罪判決を受けることになります。

本当にいいんですか。
有罪判決を受けたら、もう先生には戻れませんよ。

間違いを犯した生徒を救うためにあなたは先生になった。
その道も途絶えてしまいます。
それでもいいんですか。

もう、教師として誰かを救う事も出来なくなります。
それでもいいんですか。」


「私はある生徒を信じることが出来ずその生徒を傷つけてしまいました。」


「傷つけたのなら尚の事、続けなければいけないんじゃないですか。

過去があるから今があります。

だから今もこうして続けてこれたんじゃないんですか。

過ちを犯したあなただからこそ出来る事があるんじゃないでしょうか。


あえて新庄先生と呼ばせていただきます。
あなたは本当に校長を殺したんですか。」


法廷の扉が開いた。


一人の少年が入ってきた。


少年は頬を濡らし打ち震えていた。


新庄はその少年の来訪を涙ながらに喜んでいた。



まだ間に合うかな


少年の言葉に堺田は笑って頷いた。









徳永は被告人質問を次回に続行する旨を裁判官に伝えた後
また発作に襲われた。




目が覚めると病室にいた。



そこには娘がいた。




娘は記者として徳永に尋ねた。


「徳永先生にとって真実とは何でしょうか?」


「真実―――。
誰も勝手に作り出すことが出来ない。だから尊いもの・・・かな。」


「かっこいい事いっちゃって。」



娘は笑った。







数日後、徳永は退院してまたいつものように働いている。

あれから新庄先生は無罪が認められ
小樽にある定時制の学校で働く事が決まった。



「私はきっと杉山君が立ち直る事を信じます」


「信じるなんて簡単な事を言っちゃいけませんよ。」

そう窘める堺田に徳永は言う。


「その重さを引き受けるのが弁護士という者ではないでしょうか。」


「徳永先生もようやくオトナになりましたね。」


そう言うと三人は顔を突き合わして笑った―――。




今回のポイントは過去の過ちに対して
今一体何が出来るのか
何でもって償いが出来るのか


その点にあったような気がします。



過去の過ちを悔いて今出来る事をするってのはとっても大変です。
でも、逆にだからこそやっていけるという事もあります。


過去があるから今がある。



だからやっていけるのだと思います。




ただ、これはどこかの選挙で惨敗したどこかの党には全く当てはまらない話です。



年金を改善しますとか上手い事言ってますが
それは裏を返せば今までそれを改善できなかっただけの事で
マスコミに報道されなければ、ずっとほったらかしにされて
今までその改善をする事すら考えてなかったのでしょうからね。

過去の体制を維持することばかり考えるのではなく
これからをどうすべきかにもう少し目を向けて欲しいものです(苦笑)




今回は演出にも光るものがありました。


徳永の病室に差し込んだ光。
あれに徳永は何らかの希望を見出したのかもしれません。

誰にでも光は差し込んでくる。
朝はやってくる。

明日はやってくる。


それは杉山にも同じ事で。



でもって徳永の容態等を語る医者に対して
憤る堺田の言葉にはちょっと笑ってしまいまいた。

かつてはどこぞの大学病院の教授でしたからねぇ(笑)

かと思えば病室で目が覚めた徳永に対して

「残念でしたね。三途の川は渡り損ねたようですよ。」

ですからねぇ(笑)


渡さん、石坂さん、岡村さんの掛け合いは
それぞれの個性が引き立っていて面白かったです。


またいつか続編が見てみたいですねぇ。



特に堺田のあの皮肉が個人的にツボです(≧∇≦)b

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