風林火山 第27話 「最強の敵」

武田に歯向かう者は犬死にでると信濃の者共に知らしめる。
晴信はその信念の下に信濃を平定しようとしていた。

武田領内では作物が不作であり
また信濃平定のために戦続きであった事もあって
甲斐、信濃の領民には不満の声が溢れていた。





その日の朝、勘助は武道の鍛錬を行っていた。

甲州法度「如何なる時も武道を忘るるべからず」

その言葉に乗っ取っての事らしい。


十年前、友だった者が今は敵。
平蔵にはそれが嫌らしい。

勘助にとっては十年前の敵が味方になっただけの事。


平蔵は違う。
もっと分かり易く生きたい。
十年前に出来なかった事が出来るようになっている。
現実は平蔵の思惑とはあらぬ方向に進んでいく。


己を信じよ。

勘助は言う。

己がこうしたいと欲すれば裏切らねばならぬ相手も出てくる。

己を信じよ。

まるで己に言い聞かせるように勘助は言う。








晴信は板垣を呼んだ。
これまで諏訪では諏訪の者にそのまま領地を安堵してきた。
治めるのも諏訪のやり方に習ってきた。
しかし、このままでは甲斐の将兵の不満も募るばかり。

そこで晴信は諏訪の者達も甲斐と同様に
功績を重ねる事で所領を与える事を考えていた。

板垣は反対した。
諏訪の人心が御館様から離れると。


それをさせぬのが板垣の役目であろう。
そうして晴信は板垣の諫言を黙らせた。



そして晴信は板垣に言う。

あの館はあのままで良いか。
これからはいつ甲斐に攻め込まれてもおかしくはなかろう。
今後を考えて堅固な城を建てて守りに備えてはいかがと思うがのう。


それ程恐ろしいものにござるか。戦に負ける事が。
それは殿の怯えを見せる事になりましょう。






それから今後の展開について評定が開かれた。
御館様はどうしても村上を攻めたいらしい。


甘利は言う。
このまま村上と戦えば負ける事はないかもしれないが
更に多くの兵を失う事になりまする。


目先の小さな事にとらわれてはいかん。


弟・信繁は領民が疲弊している事もありしばらく静観する事を勧めた。

馬場信春は村上を攻める事を勧める。

馬場の意見に同意する者も多くいた。

信繁のみならず板垣にも甘利にも懸念の色が見える。



晴信は勘助に訪ねた。


次なる敵は何処かの。

御館様の次なる敵は御館様の御心中にござりまする。

その敵を見定めにならぬ限り
家臣の意がひとつになることはなかろうと存じまする。





敵は当に見定めておる!
我々は村上攻めにとりかかる!!



勘助はそれ以上何も言わず静観を貫いた。

御館様には負けを経験する事も時には必要だと―――。






「山本勘助」

評定を終えた後、勘助を呼び止める声があった。


甘利虎泰であった。


甘利は勘助の問うた。
村上には如何にして勝つつもりじゃ。
何故今回は御館様に献策しなかったのじゃ。
おぬしの策略なくしては勝てぬ事を見越しての事ではないか。



たとえ今負けても
ひとつの負け戦が百の勝ち戦を生む事もござりまする。


たわけ!
おぬしにとって戦は押すか退くかの駆け引きにすぎぬかもしれぬ。

真田殿、相木殿に聞いてみよ。
何故にかつての敵に仕えているという事か。
皆、己が妻子が大事。所領が大事。

御主が大事な御主ばかりではない。



左様な考えは持ちませぬ。


ようく聞いておけ。
戦の勝ち負けとは
誰を裏切り裏切られるかではない
生きるか死ぬかではない
何を守り何を失うかじゃ。

それが戦じゃ。

村上の首は我が甲斐の国、数万の命じゃ。








その日、信繁は諸角を伴ってお北の方を訪ねた。

兄上は一人でお決めになった。

領内では不作であった事と戦続きのために領民の不満も募るばかり。

これではかつての先代と同じではないのか。

先代はそんな御館様の性格を見抜いて
信繁様に家督を継がせようとしたのではないか。

未だにあの時の一件を悔いている諸角を信繁は嗜めた。

それは御館様への裏切りに等しいと。


この先、武田家はどうなるのであろう。

お北の方に不安が過ぎった。








相木は8月に村上領に攻め入る事を平蔵に知らせた。
そして平蔵は村上領に向かっていった。




その道中、平蔵を数人の武士に捕らわれた。





その知らせは相木と真田の下にも届く。

素破の報告によるとその武士の一団は甘利様の手の者ではないかと言う。

それならば何故甘利様が?

もし、甘利様が平蔵を村上の間者と知っていれば
おそらく相木にも糾弾される。

しかし、そのような動きは全くない。

万が一、甘利様が密かに平蔵を生け捕ったとすれば・・・

甘利様が村上に近付くため。


その目的を図る二人。

ただ一つ言えるのは甘利様は武田を裏切らないという事だけだった。






平蔵と共に村上領に現れた男がいた。
それは他ならぬ甘利虎泰であった。




その夜遅く甘利は村上と対面した。
甘利の真意を問う義清に甘利は平然と答える。

相木市兵衛は我が主が遣わした間者にござりまする。

来年2月になれば信じて頂けましょう。

武田の出陣はその2月にござりまする。



その報告は義清を驚かせた。

平蔵が持ってきた報告とは異なっていたからだ。


続けて甘利は村上に申し上げた。

武田が狙うはひとつ
村上様の御印にござりまする。

相木に代わり某がお味方になりましょう。

甲斐は今、決して一枚岩ではござりまする。
その甲斐を憂いての事にござりまする。


そなたは己の主を討つ気か。

御意。









諏訪の動きが気になる

板垣は諏訪に戻る事にした。

高遠頼継が小笠原の下に向かったと言う。


伝兵衛に小笠原家中で武田家に寝返りそうな者達を探し出すように命じた。

そのような命をこなせる程に伝兵衛は育っていた。


勘助は思う。

小笠原が武田に兵を向けるのは村上との戦で劣勢となった時
板垣様は村上との戦で弱腰になっているのではないかと。

戦続きで疲弊した我が軍が容易に勝てると思うか。

もはやそちが御館様を止める事も出来まい。

なれば如何にする。

御館様を討ち死にさせるわけにはいかんのじゃ。


次なる戦は・・・次なる戦


板垣の呟きが勘助には引っ掛かっていた。



それから勘助は由布姫の下を訪ねた。


姫は笛の音を子守唄にしていた。

あの時も一晩これを吹いた。

そして眠りについた。

その時、御館様はふと洩らした。



「負けるのが恐ろしい。」


負けた事を知らない御館様の妄念がそうさせるのじゃ。

御館様は戦に負けて大事なものを失ってきたものがない。
それを知らぬ故に新たな恐怖が生まれる。

勘助、私の言う事は間違っておるか。


おそらくは左様な事でござりましょう。
かというて敢えて負ける訳にはいくまい・・・




その言い終える間もないうちに
勘助はあの時、板垣が言った言葉を思い出した。


そして勘助は板垣の覚悟を悟った。





晴信は将兵に村上方に攻め入る事を命じた。

これより先、信濃においては所領を分け与えると。
それを示すための朱印状は晴信が作り上げた仕組みであった。







御館様、此度の出陣
今しばらくお待ち下され。

まずは信濃の内情を見極めまする。

某にお任せ下され。



晴信は
『次なる敵は己で見定めよと申した』と
先日評定にて勘助が言った言葉の揚げ足を取った。



村上攻めには異を唱えませぬ。

しかし、今の敵は御館様の御心中にござりまする。



たわけ!

勘助の言葉を板垣は窘めた。

御館様は我らの力を見込まれておるのじゃ。

されど戦に負けた者が恨みを残したままでは国は治められません。

己の国とは人である。御館様に他ならぬと。



わしが負けてもそう言えるのか。
勝っておるからこそ言えるのであろう!

このわしはこれからを考えて生きておる。
機を見て必ず者は必ず滅びる


人の道を違えてはなりませぬ。

人の道は一つにあらず。戦に勝つ道もまたしかり。


いや、一本であるべきです。

一本であらずして我ら家臣共に歩む事は出来ませぬ。

御館様は変わられたのはなく
自らの力を信じられなくなった事

御館様の力とは人を動かす力でござりまする。
その力でもって人を動かす力でござりまする。

勘助を軍師にしたのもその力
そのような力を持つ者は他にはおりませぬ。

我らは得がたい主君を迎えておりまする。
その主君に命を捧げているのでござりまする。

何卒自信をお持ち下され。





板垣の覚悟を知る勘助の隻眼からは今にも涙が溢れそうな程に潤んでいた―――。






まず簡単に信濃を現状について







応仁の乱以降、足利幕府の権威が弱まったために各土地の豪族がそれぞれの生活を守るようになっていました。
それは信濃においても例外ではありませんでした。

かなり大雑把ですが信濃の領土はこんな感じです。








でもって現状の支配状況はこんな感じです。






信濃攻めを続け、徐々に信濃の残党への対処がひどくなっていく武田家に対抗するために
敗れた者や残された者達は反武田家となる勢力に助力をしてきます。


その中で最たる者が村上義清って事ですね。
















今回、最初はヒゲなしで描いてみたんですけど
どうも違和感がアリアリだったので、ヒゲを描いてみて比べてみました。

いかがなもんでしょうかね(; ̄∀ ̄)ゞ




しかし、戦続きのために兵は疲れてしまい
更に領内では不作になり、不満が出るのは明らか。

しかも次なる相手は
連勝の勢いだけで勝てる相手ではない。

ならば、どうすればいいのか。



1.彼の場合





あくまでも静観します。

彼にとって「最強の敵」とは村上義清ではなく
己の中にあるものなのかもしれません。

自分を信じれない心こそ最強の敵なんでしょうね。

文学ばかりに傾倒すると全てが疑わしいと感じてしまう。
それを払拭させるために彼は武道に励みます。

己を信じるために。

武道とは己との戦いですからね。

御館様が負ける事も時には必要と彼は考えています。
そうして負ける恐怖から御館様を解放してあげる事も軍師の務めだと考えています。

たとえ、静観する事になって
負けるという事で御館様を裏切る事になったとしても
それは御館様が成長する大望のための小さき事


あくまで御館様を思っての事のようです。






2.彼の場合





彼としてはどうしても村上攻めは止めさせたかった。
しかし、ここにおいてそれはもう無理だと悟りました。

御館様がこのようになってしまったのは自分らのせいだと。

そして彼も御館様が負ける事を知る事が必要だと感じています。

負ける事を想定して
負けた場合に起きうる事を踏まえて策を張り巡らします。

自分がいなくなってもいいように。

彼は己の命を以って御館様を諌めるつもりのようです。








3.彼の場合





彼は戦の勝ち負けとは何を守り何を失うかという事を勘助に語りました。

その言葉が彼の信念なのでしょうね。

彼は板垣の覚悟を既に知っていた。

その彼を死なせたくはなかった。

だから、彼は村上に寝返るような行動をとったのでしょう。

武田の目的は唯一つ、村上の首。
村上に言った通り、これこそ彼の目的なんでしょうね。

そのために己の命を失う事になっても。


どうしても負けたくなかった。

戦によって失うものを怖さを知っている彼ならではの考えなのでしょうね。





どちらにしても板垣と甘利の覚悟は悲壮たるものです。


その真意を知っているのが勘助のみというのが更に悲しいですね。


公式HPのトップ画面が変わっていました。
来週は涙が止まらんでしょうね。

ちなみに今ウルウル状態です(;▽;)






それと先日の土曜スタジオパークを見ていました。
そのゲストは千葉真一さんでした。

その千葉さんが生放送中に
この板垣信方の役が終えると同時に「千葉真一」を辞めると言ってました。

あれには見てる私もそうでしたが
会場にいる人やアナウンサーも皆「え(゚Д゚)?」ってなってましたね。

誰も何も言えませんでした。

来年から何かしますから楽しみにして下さいと言ってました。

どういう形で活動されるのかは分かりませんが
千葉真一さんの今後の活躍をお待ちしております。








さて、もうひとつのサブストーリーはもちろん小山田家。




彼女の目に心を奪われた信有。


そなたは待っていた。
心の内では待っていたはずじゃ。

そなたをこの城から抜け出してくれる人を。



美瑠姫は信有を拒みます。

私が生き残ったのは最後まで武田に一矢報いるのを待っていただと。





しかし、数日後
美瑠姫は信有を受け入れます。

その真意を問う信有に

あなた様に負けたのです。
あなた様に見抜かれた通りになったのです。



生きることは裏切りではない。


私は己が大事。己の命を殺す事が出来ませなんだ。



しかし、彼女が自分のお腹をさすっていました。

もしかしたら今まで子が出来なかった美瑠姫の中に
子が宿っているのかもしれません。

だから彼女は己の命を殺す事が出来なかったのかもしれません。




そんでもってこういうのも描いてみました。


















NHKのハンドブックの構図を参考にしてみました。
皆様はどちらがお好みでしょうかね。

ちなみに自分は上側です(笑)

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この記事へのコメント

2007年07月08日 23:33
ぎゃーっ!すてきー☆ikasama4さんサイコー◎
ドッキドッキ☆ファンになりました・・・ikasama4さんの「画力」の(笑)
うわ~募金して募金して(><)もっち「ヒゲなし」の方◎
来週のクラブから使っていいですか?ねえねえ(笑)
ああ~色々コメントさせて貰おうと思って参りましたのに、最後の最後で全部飛んでしまいました(苦笑)また改めて。(ペコ)
2007年07月08日 23:46
土スタ、見損なっちゃったんですが。。。
千葉さん、何か覚悟があるんですね。
板垣の覚悟もダブってか、本当に素晴らしい演技で。
もう涙でした~(; ;)
来週は辛すぎですね。

私も小山田さまに、ヒゲはいらないのでした(*^.^*)
ikasama4
2007年07月09日 00:03
なおみ様
>ぎゃーっ!すてきー☆ikasama4さんサイコー◎
>ドッキドッキ☆ファンになりました・・・ikasama4さんの「画力」の(笑)
喜んでもらえて何よりです。
葉書に描いたもんですから、えらく細かくなりました。

>うわ~募金して募金して(><)もっち「ヒゲなし」の方◎
>来週のクラブから使っていいですか?ねえねえ(笑)
OKですよ( ̄ー ̄)b
ikasama4
2007年07月09日 00:03
くう様
>千葉さん、何か覚悟があるんですね。
どうもそのようですね。

>板垣の覚悟もダブってか、本当に素晴らしい演技で。
>もう涙でした~(; ;)
>来週は辛すぎですね。
今週の板垣だけでも十分泣けてしまうんですけどねぇ。
来週は更に悲しくなりますね。
それを自分の過失とはいえ
乗り越えていかなければならない晴信も悲しいですね。

>私も小山田さまに、ヒゲはいらないのでした(*^.^*)
ヽ(・∀・)人(・∀・)人(・∀・)ノ賛成

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