わたしたちの教科書 最終話

皆さん、落ち着いて。
これから僕がこの学校のイジメを解決します。

世界は怒りと憎しみに満ち溢れている。

僕がこの世界を証明してやる。




小学生の頃、わたしの学校に明日香が転校してきました。

明日香が施設に入った後に。


初めて会ったその日から私と明日香はトモダチになりました。



ともみ・みかづき・きりぎりす・すいしゃ・しゃんでりあ・あすか





私たちはずっと一緒にいた。

楽しいことは全部ハンブンコしよう。
悲しいことも全部ハンブンコしよう。



私はあなた
あなたは私

ずっと二人で生きていこうって。

私たちだけの約束。


ずっと同じだと思った。


私は一人の男の子を好きになりました。





それは兼良陸君でした。






彼は今、「この世の支配者」に人生を翻弄されていた。


あんたら、先生だろ。
生徒の身代わりになって死んだら教師の鑑だろ。

先生だったら生徒のために死ねるよね。

ハイ、手をあげて。







兼良君の事、好きになった事を明日香に言いませんでした。

明日香が一人ぼっちになるから。

あれが私と明日香にできた初めてのヒミツ。


あれが全てのイジメの始まりでした。







それから私は兼良君と一緒に過ごすようになりました。


ある時、見てしまった。


見知らぬおじさんが高校生の女の子とキスをしていた。

援助交際だとわかった。

私、その人が誰だか知らなくて


「気持ち悪い」と言いました。

「最低だね」と言いました。


その時、兼良君は泣いていました。



それは兼良君の父でした。



次の日、兼良君が私の席にきました。

私に言いました。




『おまえ、雑巾臭い。』



彼は私の椅子を蹴りました。


クラス全員がそれを見ていて、その日から私のあだ名は「雑巾」になりました。


私は1年2組のいじめられっこになりました。








「私が代わるわ。」

あんたは黙ってろ!


八幡先生、あんた、何で教師になったの?金八先生なら真っ先に名乗りでるんじゃないの。

吉越先生、ダメだよ。そんなバイトしちゃ。

熊沢先生、イジメがあるのに見て見ぬフリしてたんだ。

戸板先生、あなたは業者から金をもらっていた。

大城先生、あなたは生徒の親と不倫していた。




あんた達は全員教師失格だ!






明日香にだけは私がいじめられる事情を話しました。

明日香は兼良君と話そうとしましたが、私は断りました。


私は同情されたくなかった。

明日香に酷いことを言ってしまった。

あなたみたいな親もいない子に同情されたくない。

あなたは可哀相な子だから



明日香は何も言わず、ただ悲しそうにしてました。




私にはピアノがあったから。

でも、教室で誰かが投げたモップに当たって指を骨折してしまった。

その時、分かりました。

私の人生は終わったって。



私はカッターナイフを持って秘密の隠れ家に行きました。








正直に言えばいい。

本当は生徒より自分の方が可愛いんだろ。



「止めて下さい。」


悪いのは全部、僕です。

先生達はいつも僕達のために頑張ってくれました。

先生達は悪くありません。


「フーン、よく分かってんじゃん。だったら死ね。」






何で邪魔するの?

何で死んじゃいけないの?

もうピアノも弾けないの。

生きてても仕方ないの。


朋美にはいるじゃん。

朋美が死んだら悲しむ人がいるじゃん。



だったら代わってよ。

私の代わりにあなたがイジメられてよ。



「いいよ。」


え?



「私が朋美の代わりになる」


なんでそんな事言うの?


約束したでしょ。

私はあなた。あなたは私。

どんな事も半分ずつ。

大丈夫。私だったら悲しむ人はいないから。


明日香は自分で噂を流し始めました。




私にはまた静かな毎日を送る事になりました。

明日香の笑顔とひきかえに。


ある人が言いました。

「藍沢なんて死ねばいいのに。」


―――違う。

『明日香は私の身代わりになってくれたの。』

でも、私はいえなかった。

何も言えず黙っていました。





―――明日香さんが教室の窓から転落した時、あなたはそこにいたと言いましたね。





はい。
あの時、私は教室に戻りました。

明日香は死のうとしてるんだと思いました。







こいつは何の罪もない女の子をいじめて殺したんだ。


誰にも裁くことは出来ません。

藍沢明日香はそんなことを望んではいません。



加地の言葉に気を取られているうちに支配者の凶行は終焉を迎えた。








明日香の笑顔は昔と同じでした。

イジメより酷いことをした私に微笑みかけてくれました。

やっぱり私、あの時死んでおくべきだった。


何でそうなの?
明日香は私のせいでいじめられているんだよ。


私は一度も明日香に聞いた事、なかったのに。


昨日ね、加地先生に言われたの。

私たちは駅伝の襷を繋いでいるんだって。

私は朋美から襷をもらったの。

そう思えば全然大丈夫。

一昨日、あそこに行ってみたの。

私たちの秘密の隠れ家。


私も一昨日、死のうと思った。

そう思って行ったの。

私たちの秘密の隠れ家。

でも、死ぬの止めちゃった。



私は一人じゃないって思ったの。

私にも悲しむ人がいるってわかったの。


・・・トモダチ?先生?


家族?


明日香は首を振った。


朋美にもいる。

朋美の死を悲しんでくれる人が。

必ずいる。

だから死なないで。

死んじゃだめだよ。

生きてなきゃダメだよ。




―――間違いありませんか。

明日香はそう言ったんですね。







「ハイ。」




ともみ・みかづき・キリギリス・すいしゃ・しゃんでりあ・あすか


私たち、また一緒に帰ろ。


そして朋美は教室に戻った。


振り返ると明日香はいなかった。


下の方で女子生徒の悲鳴は聞こえた。




―――自殺ではなかったのですね。

事故だったのですね。





明日香が死んだのは私のせいです。

あの時、私も一緒に死にました。

お願いします。

私を死刑にして下さい。




これ以上、自分を責めちゃだめ。


積木の言葉は一足遅かった。


彼女は己のした罪を償うために

彼女が言葉を発する度に

彼女の心を殺していた事を。



証言を終えた仁科朋美の瞳は光が通さない程に暗く沈んでいた。










1年後。


明日、裁判が結審する事になった。


加地はあの事故の影響で下半身が不自由になっていた。


積木と加地はあの時と同じようにタイヤキを食べていた。




正直、今でもイジメはあるらしい。

でも、前と違って職員室の議題に取り上げられ
どうすればいいか、いつも夜遅くまで議論されるようになっているそうだ。



加地は言う。

時々、想像する事があります。

学校から社会から
イジメや自殺をなくす薬を誰かが開発します。

その時、世界はどうなっているんだろう。

僕達はどうなっているんだろうって。

でも、何も思い浮かびません。

頭が真っ白になります。

人はこのまま、問題を抱えながら生きていくんだろうかと。



―――青春ね。







翌日、結審のその日。

積木の前に瀬里がやってきた。


よく続いたな。
あの日、仁科朋美の証言が出てきた時点でこの裁判は取り下げられるかと思っていた。


私のした事は間違いじゃなかったのか。
勝ったら嬉しいのか。負けたら悲しいのか。
何もわからない。
明日香はこんな裁判、望んでなかったのかもしれない。



被告代理人から一言言わしてもらう。
この裁判は意義のあるものだった。
君の戦いは何一つ恥じる事はない。


―――不遜な物言いね。


二人は笑った。



判決が出た。
原告の請求は一部を除き棄却された。

藍沢明日香がいじめられていた事実はあった。
そして、学校側の措置は安全配慮という義務に対する違反はあった。

しかし、藍沢明日香の自殺といじめの因果関係は見出す事はできなかった。

よって、慰謝料請求及び損害賠償請求は棄却された。








積木は今日の裁判の報告を藍沢明日香にしてきた。


その帰りにある人物にあった。

雨木さんだった。


今、彼女は不登校の児童を預かるボランティア活動をしていると言う。


彼女は仁科朋美の居場所を知っていた。

そしてこう言った。

『彼女を救えるのはあなただけです。』






雨木が教えてくれた場所に仁科朋美はいた。



1年前と変わらぬ瞳。
彼女の心に未だ光は届かない。




朋美ちゃん、あなたに連れていって欲しい場所があるの。


明日香に会いに行こう。






そして、珠子と朋美は明日香に会った。







明日香より


明日香へ


わたし今日死のうと思ってた。ごめんね。明日香。
わたし、今まで明日香の事がすきじゃなかった。
ひとりぼっちのあすかがすきじゃなかった。
だけど、ここにきてわたしは気付いた。

ここには8歳のときのわたしがいる。
わたしには8歳のときのわたしがいて
13歳のわたしがいて20歳になるわたしがいて
未来のわたしがいる。

もし今のわたしが死んでしまったら
明日のわたしがかなしむ
昨日のわたしがかなしむ
わたしは昨日と今日と明日を生きているんだ。

だから、明日香死んじゃダメだ
明日香、たくさんつくろう。
思い出を夢を。

明日香、私達は思い出と夢の中に生き続ける。
永い永い時の中を生き続ける

永い永い時の流れを私達は歩き続ける。
いつまでもいつまでも―――。




藍沢明日香は自殺じゃなかった。

彼女は決して死を望んでいなかった。

そんな彼女が死んでしまった。


事故だった。

でも、私があんな事をしなければ彼女もあんな事はしなかった。


私が殺してしまった。



事実としては事故だった。

でも、仁科朋美の中では藍沢明日香は殺された。

仁科朋美の手で。


仁科朋美は藍沢明日香を死に追いやった人が許せなかった。

その人を死刑にして欲しかった。


それは藍沢明日香をいじめた兼良陸でも
いじめを見て見ぬふりをした先生達ではなく

他ならぬ自分だった。


仁科朋美は死にたかった。


仁科朋美は自分が許せなかった。


自分を殺して欲しかった。



そういうことのようですね。


仁科朋美の中では「他殺」が成立しているようです。

自分の「他殺説」は当たらずとも遠からずってとこかなぁ(; ̄∀ ̄)ゞ



こうして見ると今までの仁科朋美の発言がキレイに繋がってきますね。



音也の凶行。
ドキドキしましたが、少々中途半端な印象が受けました。

結構引っ張っていただけにねぇ。


なんで、一応ここに内容は書いているんですが
書いてみた自分が読んでみてイマイチだったんで
文字の色を背景色と同化してみました(; ̄∀ ̄)ゞ





あれから音也はどうなっていったのか
1年後の兼良陸はどうなったのか

変わったのか
今でも変わらないのか

見てみたかったのですがね。


このドラマではあくまでも大人達と明日香がいた中学校を主体にしているって事なんでしょうね。

あの事件に関わった生徒達は卒業してしまうと
ほっとんどほったらかしみたいです(笑)



それから藍沢明日香について。
最終回の構図を見ると藍沢明日香らしいなって思うんですけど
第1話の時の藍沢明日香のキャラと少々焦点がズレているような
印象も受けるんですけどね。




今回はもう仁科朋美と「明日香」の独壇場です。



あの時の仁科朋美の沈んだ瞳は
序盤での積木珠子と同じ瞳をしてました。


この世に信じられるものは何もないみたいな感じで。



そして終盤の演出。


廃墟のような場所に書かれた明日香の言葉。


それを読み終えた時に窓が開き、希望の光が
積木珠子と仁科朋美を包み込む。



今後、仁科朋美がどうなるのかっていう展開が見えてきますね。


この仁科朋美を演じた谷村美月さん。

物語の前半と後半で全く違う表情を見せてくれました。

これには正直、驚かされました。


彼女はもう演技派女優の仲間入りをしたといっても過言ではないと思います。




珠子と朋美。

二人は似た者同士。


二人は同じ罪を背負っていきてきたからこそ分かり合える

私はあなた

あなたは私



このドラマは最後までこの相対する二人の対比を貫いてきます。



彼女も今の積木のように笑顔になれる日も近いようです。






この構図はドラマじゃなくて自動車の広告の構図を参考にしました。

イラストのサイトを見てもらったら分かりますけど、これで3枚目です(; ̄∀ ̄)ゞ



最後にして積木さんの笑顔が見れました。





もし今のわたしが死んでしまったら
明日のわたしがかなしむ
昨日のわたしがかなしむ
わたしは昨日と今日と明日を生きているんだ。



この言葉は結構心に残ります。


あの時、藍沢明日香は死のうとしていた。

でも、ヒミツの場所に行った時
明日香は8歳の明日香に会った。

「明日香」は言ってた。

未来の自分に会いたいって。

未来の自分も言ってた。

過去の自分に会いたいって。

だから死んじゃダメって。






この言葉を聞いただけでも
このドラマは見た甲斐がありますね。



そうして毎日、自分にこの言葉を追いかけていく。


ずっとずっと追い続ける。


「世界を変える事ができますか?」


この問いの答えを探していく事で「生きる」実感があるのかもしれませんね。

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この記事へのコメント

2007年06月29日 09:31
今ク-ルの中で最も最終回らしいものでした。良かったです。

特に、朋美の独り語りの芝居。シ-ンによって微妙に表情が
変わっている!って圧巻でしたね。かなり曲がりくねった
道のりのドラマだったけれどちゃんと終着点が用意されていたのは
見事で、作り手のやりたいことが出来たのではないかと思いました。

あのHRの討論みたいなものは蛇足だったかな? 

(時間がなくて更新できずにすみません)
キッド
2007年06月29日 16:14
ikasama4様、こんにちは。
結局、春ドラマも連日レビューしてしまったわけですが
そうでないと「わたしたちの教科書」
にめぐり会えない可能性があったわけで・・・。
と思うような傑作ドラマでした。
「そしたらねーの東京タワー」より涙が止まらなかったな・・・。
罪なき罪の物語は
いくらでも妄想感情移入ができるので
珠子の心の底の底までサイコダイバーしたような
気分にひたっています。
で、春ドラマは完了なのですが
土11がいきなりいじめもの。
ikasama4様はマチベン方向のようですが
キッドはじじいなので
女子高校生のSMプレーに流れてみようと思います。
・・・ナニか間違ってますかーっ。
それでは夏ドラマも
よろしくお願いします。
2007年06月30日 13:15
音也の件はikasama4さんと同じく、中途半端な印象を持ちました。
「自分が処刑する」なんていう考えの人が、簡単に変わるとは思えませんが、
何かもう少しあっても良かったかなぁ(^_^;)

それと対照的ぐらいの感じで、裁判のシーンは見ごたえがあったと思います。
中学生の女の子の心が壊れてしまうぐらいの話をさせるのは
酷だなぁ、と思いつつ引き込まれました。
谷村美月ちゃん、上手かったですねぇ∑d(゚∀゚d)
ikasama4
2007年06月30日 20:02
タカシ様
>今ク-ルの中で最も最終回らしいものでした。良かったです。
たしかに今期の中では素晴らしい最終回でした。

>特に、朋美の独り語りの芝居。シ-ンによって微妙に表情が
>変わっている!って圧巻でしたね。
本当にそうですね。
最後は谷村さん演じる朋美が全てオイシイとこをもってきました。
次に彼女が出演する作品が気になってしまいます(笑)

>あのHRの討論みたいなものは蛇足だったかな?
たしかに「世界を変える事はできますか?」で
終えても良かったかもしれんですね(^▽^)
ikasama4
2007年06月30日 20:03
キッド様
こんばんはです。

>そうでないと「わたしたちの教科書」
>にめぐり会えない可能性があったわけで・・・。
>と思うような傑作ドラマでした。
たしかに傑作と言っても差し支えはないですね。

これはある種の道徳的要素を孕んだ作品として
色々な人に見てもらいたい作品でした。

罪は法によって裁かれるのではなく
人によって裁かれる。

罰は法によって受けるのではなく
人によって受ける。

罪と罰をどう考え
そこから、自分がどう償い生きればいいのか

そんな風に感じられるいい作品でした。

私も今日は土9と土11は見てはみるんですけどね。
土11はあからさまなんでちょっとキツイかと思ったりして(; ̄∀ ̄)ゞ

こちらこそ夏ドラマもよろしくお願いします。
ikasama4
2007年06月30日 20:03
にな様
音也については何かしらの贖罪でなくてもいいので
個人的には己がした事を後悔するようなとことかが欲しかったですかね。

それに比べて裁判シーンの見応えといったらもう( ̄ー ̄)b

谷村さんは本当に凄かったです。
どんどんと引き込まれました。

彼女あっての作品だと言っても言い過ぎではないですね。
2007年06月30日 21:35
>彼女はもう演技派女優の仲間入りをしたといっても過言ではない

証言台に座った朋美は迫真の演技でしたね。
座って話すだけでもかなりの雰囲気を出していました。
最後の、心が壊れた状態もうまかったわ~~。
今後が楽しみな子だと思いました。
志田さんも璃子さんも同じぐらいの年齢ですよね。
この年代の粒が揃ってますね!!
ikasama4
2007年07月01日 14:28
かりん様
谷村さんは最近だと「生物彗星WoO」で主演
「マチベン」ではこれまた今回と似た状況の
役柄を好演していました。
今年で17歳になるそうで
映画の方では主演も多くしてるようで
今後の活躍に期待する役者さんです。

ドラマでもバンバン活躍して欲しいですね。

>志田さんも璃子さんも同じぐらいの年齢ですよね。
>この年代の粒が揃ってますね!!
ホント、皆さん、将来が末恐ろしいです(; ̄∀ ̄)
2019年06月07日 10:40
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