映画「武士の一分」 (ネタバレあり)

武士には守るべき一分がある―――。





山田洋次監督が描いた時代劇三部作
「たそがれ清兵衛」
「隠し剣 鬼の爪」
の最後を飾る作品。

これはもうよく出来ております。


いきなりネタバレですが(笑)



春先から物語は始まる。

季節を感じさせるのどかな風景。
退屈な毎日だけど
妻がいて中間がいてくれるのどかな風景。


それが梅雨時の大雨と共に夫に突然の出来事が訪れる。

梅雨明けと共に夫は目を覚ますものの
夫は目が見えなくなっていった。


夏になると新之丞の処遇を巡って親戚達が相談をする。
そして妻・加世は夫の処遇に対してつてを頼る事を勧められる。


夏の終わりに親戚から妻が茶屋に出入りした事を知らされる。


そうして秋の始まりに新之丞は妻の裏切りを知る。
それから妻を離縁して妻を奪った島田を斬る事を決意する。


葉は緑から黄色く染まっていく。


果し合いの後、冬の足音が近付いていく。


その時、新之丞は実感する。


妻といた時の温かさを。


みたいなね。




三村家周辺は細かいとこも結構キチンとしてましたね。

目が見えなくなったとはいえ、
部屋の掃除、身支度はキチンとする妻の甲斐甲斐しさ。
普段からちゃんとアイロンもかけていたんでしょうね。

また、新之丞の月代(さかやき)や髪も妻が整えていたんでしょうね。

それが妻と離縁した事で
部屋は少し荒れた感じになってきて
新之丞の服もちょいとヨレヨレになってきて
新之丞の髪も伸び放題になってきて


こういうところも流石山田監督といったとこでしょうかね。




今回、改めて感じたのは共に生きる事の喜びなんでしょうね。

妻の裏切りを知った新之丞は妻を離縁します。
そして妻を奪った島田へ果し合いをします。

当時、果し合いはご法度でおそらく喧嘩両成敗で自分のみならず
家族にも罰が及ぶ事があったようで
新之丞は妻の事を思って離縁したというのもあるんでしょうね。

目が見えない自分。
相手は新陰流の遣い手。

ならばこそ、死を覚悟して戦わなければならない。
相手は生に執着がある。

そこに勝機がある。


そうして新之丞は島田に一太刀浴びせる事で
己の「武士の一分」を果たす訳ですね。


そうしてこの一件もまた大騒ぎになるのですが
新之丞は島田と果し合いをした容疑者の候補から漏れる訳です。

仮に島田に恨みがあったとしても
目が見えない男が遣い手の島田に太刀を浴びせる事ができるはずがない。

皮肉にも目が見えない事で新之丞は命を救われた訳です。


図らずも生き残った新之丞。


一方、島田は何も語らず切腹したそうで。
ない左手を見る度に目が見えない新之丞に斬られた事を思い出す。
それが己の恥と感じたのでしょうね。


己の一分を果たした今、残るのは妻がいない寂しさ。

妻の存在の大きさに自分のした事を後悔する。
知らなかった方がよかったのだろうか。

でも、知らないという事は相手に対して罪の意識をずっと背負う事になる。


互いに互いの罪を告白して、それを許していく。
そうして二人の絆が深まっていく。

当たり前の生活こそ幸せがある、という事なんでしょうね。




また、山田洋次さん三部作は藤沢周平さんの原作が元になっておりまして

舞台は幕末の海坂藩。
そして主人公は微禄の給料ながら今ある幸せを噛み締めている剣の遣い手。

そうしてクライマックスにおける剣による戦い。
これが全体の作品で共通している事ですね。

ただ、今回の作品が前の二作品と異なるのは
「たそがれ清兵衛」
「隠し剣 鬼の爪」
共に藩命の下、主人公は止むを得ず刀を抜きます。

一方、今回の作品では
新之丞は己の意地、己の一分のために刀を抜きます。

この差は結構大きいように思います。

(2006/12/05)
ちょっとこの部分について補足。
山田さんの三部作を見ればよくわかるのだけど
武士という世界をある種、批判してるんですね。
武士が時として藩命によって相手の命を奪うという事に。

好き好んで人を殺したくはない。
しかし藩命に逆らう事は
己の家禄の減俸や己死が問われる事にもなりかねない。

家族を守るために。
藩命を果たした彼の手に残るのは
人の命の重さと人の命を奪う虚しさ。


前の二作品では藩命に否応なく主人公は巻き込まれていく訳です。



しかし、今回の作品で
新之丞は己の信念で島田を斬る事を決意します。

己は死んでもいい。
ただ一太刀。

己の無念。妻の無念を。

島田に浴びせたい。


彼に島田の命を絶つという事までは考えてなかった訳ですね。


つまり
己の心を殺してまで人を殺さなければならないのと
己の信念によって恨みの一太刀を浴びせなければならないのとでは
その意味合いはちと違うような気がします。

ただ、序盤で殿に毒になるかもしれない食事を出した責めを負って
上司が死を以って償わなければならなかった時代という事に
武士という者の残酷さ、無情さを見せ付けてはおりますけど。


その後、新之丞は島田の死を知る事で、ある種、虚しいものを感じる訳です。


自分の家族の恨みを晴らす。
でも、それで人を殺してはいけない。

終盤の新之丞の台詞からその辺がなんとなく窺えるようです。

三部作を通じて命に対する軸は一貫してブレませんね。




さてさて

主演の木村さんの演技もさることながら
殺陣も流石でしたね。


目が見えない。
それ故に太刀筋も止める事ができないんですよね。
殆ど地面に叩きつけるくらいの勢いになってくる。

相手と戦う時、刃を重ねたら
相手の刃の動きに合わせて己も動く。

また剣の師匠や徳平と相手の気配を察知する練習が発揮されてましたね。



加世を演じた壇れいさんも良かったです。
旦那様に対する思いとかもさる事ながら
テキパキと家事全般をこなしていく姿も見事ですね。

旦那様の目は見えないけど、旦那様に会う前に
髪を整える仕草も加世の人柄を感じさせてくれます。


また、笹野高史さん、桃井かおりさん、小林稔侍さんに
左時枝さん、岡本信人さん、赤塚真人さんに大地康雄さんも出てましたね。

それとスタッフロールにささの貴斗君の名前がありました。
ささの貴斗君はご存知笹野高史さんの息子さんで四人兄弟の末っ子さんです。

ちなみに現在
笹野高史さん58歳
ささの貴斗君9歳

おそらく笹野さん演じる徳平とチャンバラしてた男の子がそうだと
思うんですがね( ^▽^)








そして今回、一番に驚いたのが
















公式HP

これこそ当たり前の喜び、当たり前の幸せなのかもしれません(笑)

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この記事へのコメント

2006年12月03日 20:59
ikasama4さま、こんばんは
キャハハ・・・拓哉さまです(^-^)
とっても嬉しいです★★
TBしてしまいましたエヘヘ
華麗なる一族の拓哉さまもヨロシクおねがいしまぁ~す(^^)
2006年12月03日 21:23
こんばんは!

いやん!素晴らしい♪素晴らしすぎる♪
ここまでちゃんと見てくれてありがとう!(笑)
さすがだな~やっぱり時代劇好きだし、藤沢周平さん好きな
ikasama4さんの感想は。
ikasama4さんの感想を読んでいくと、映像が蘇ってきます。
山田組ってすごいですよ。メイキングを見ても思ったけど。
細かい葉っぱの動きひとつにもすごいこだわっててね。
この感想は拓哉に教えなきゃ(笑)
ココ見てねってメールしとく(笑)
素敵な感想ありがとう☆
2006年12月03日 21:25
追記でがんす!

公式HPに拓哉の写真が載るなんて、これはすごいよね!
こうでなくっちゃ!ジャニーズ解禁ですか?(苦笑)
ちょっと嬉しかったです。
ドラマの公式はダメなのかしら?
ikasama4
2006年12月03日 22:37
jewels様
こんばんはです。
TBどうもありがとうございます。

>華麗なる一族の拓哉さまもヨロシクおねがいしまぁ~す(^^)
(^∀^)ゝ”了解しました。
ikasama4
2006年12月03日 22:37
アンナ様
>さすがだな~やっぱり時代劇好きだし、藤沢周平さん好きな
>ikasama4さんの感想は。
これでも大分端折った感じなんですが
そんなに褒められると返って恥かしいです(;^∀^)ゞ

>細かい葉っぱの動きひとつにもすごいこだわっててね。
そうですね。
例えば庭先で葉が一枚落ちてくる、その音で
新之丞が木刀を振るうとことか
木村さんの立ち位置とかを考えて葉を落として
いたりするんだろうなってのが伺えますね。

>この感想は拓哉に教えなきゃ(笑)
>ココ見てねってメールしとく(笑)
「旦那様」によろしくお伝え下さい(笑)
ikasama4
2006年12月03日 22:37
アンナ様
こちらも追記でがんす。

>公式HPに拓哉の写真が載るなんて、これはすごいよね!
大河ドラマで香取さんや滝沢さんはトップには出てましたが
キャストには相変わらず出てなかったんですがね。
それがこんなにも載ってしまうと凄い感動してまいます(笑)

>こうでなくっちゃ!ジャニーズ解禁ですか?(苦笑)
できればそうあって欲しいですね。

>ドラマの公式はダメなのかしら?
来年のTBSのドラマでその答えが出そうですね(;^∀^)
2006年12月04日 00:02
ikasama4さん、こんばんは~!
早速、「武士の一分」にコメントを下さり、嬉しいです(^・^)
映画の日に
SMAP、ありがとう~♪で行ってきました(笑)

ところで、ページを開いたら
木村君のイラストに感激です!
ワタシは、失明してからの演技が良かったかなぁ。
(髪が少しずつ伸びて、細部への気配りも感じました)
時代劇をほとんど見ないワタシでも
昔の日常の暮らしぶりがわかり
古き良き時代を堪能しましたね(^・^)

>おそらく笹野さん演じる徳平とチャンバラしてた男の子がそうだと
思うんですがね( ^▽^)

うんうん♪たぶん、そうだと思います(^◇^)
桃井さんも良かったです!
叔母役がピタリでがんす(すっかり口癖、、、笑)
ikasama4
2006年12月04日 20:12
ルル様
>木村君のイラストに感激です!
ありがとうございます<(_ _)>

>ワタシは、失明してからの演技が良かったかなぁ。
見えない状態での所作や目の迫力は圧巻ですね。

まぁ序盤ののどかな生活は退屈かもしれませんが
そこにこそ
終盤の「幸せ」というものが
どういうものかという事に繋がるんでしょうね。

>桃井さんも良かったです!
>叔母役がピタリでがんす(すっかり口癖、、、笑)
そうでがんすな(笑)
2006年12月19日 11:54
今頃、失礼しま~すm(__)m

ikasama4さんの絵を見るたびに、
ダンナ様の横顔にうっとりする日々でがんす(笑)
となりで眠りこけるおばちゃんと戦いながら、
木村さんにうっとりしてきました。

そして、徳平をやられた笹野さんに目が行ってしまいました。
なんだか笑顔にさせられて。
笹野さん自身も「ダンナ様に惚れ惚れしていた」と言っていましたが、
それが伝わってくるような気がしました。
ikasama4
2006年12月19日 21:42
にな様
どうもです。

>ikasama4さんの絵を見るたびに、
>ダンナ様の横顔にうっとりする日々でがんす(笑)
意外に好評で何よりでがんす。

>そして、徳平をやられた笹野さんに目が行ってしまいました。
>なんだか笑顔にさせられて。
最後に当たり前のように飄々として
飯炊き女を連れてくるとこも憎らしいですよね。

そうなると
徳平はこのためにわざとマズイ飯をつくったのですかね(笑)
(多分違う)


>笹野さん自身も「ダンナ様に惚れ惚れしていた」と言っていましたが、
>それが伝わってくるような気がしました。
主従だけど、ちょっと親子のような雰囲気もあるような
二人の関係からもそんな雰囲気が伝わってきますね。
2007年01月17日 23:08
こんばんは。遅ればせながら本日、見て参りました。
>普段からちゃんとアイロンもかけていたんでしょうね。
・・・ああいう道具を初めて見ましたので、驚きました(でも、それは置いても、日々つましく・きちんとしていたんだなー、と・・・)。

全体的に派手さや華やかさより、丁寧な部分が積み重なって、「美」につながっている作品だなぁ・・・と思いました。
(「神は細部に宿る」という言葉を、思い出しました・・・。)
ikasama4
2007年01月18日 21:27
朝凪、夕凪様
>・・・ああいう道具を初めて見ましたので、驚きました(でも、それは置いても、日々つましく・きちんとしていたんだなー、と・・・)。
昔から武家のたしなみはあったという事なんですね。

なるほどですね。
庭の風景の移り変わりもさることながら、
人の所作や立ち振る舞いのひとつひとつが
「美」に繋がっていくのでしょうね。
2019年05月08日 19:59
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